そんな状況に、戦々恐々としているのが韓国だ。メディアはこぞってこの話題を取り上げており、「TOEIC、10年ぶりに出題形式を変える…就活生“悲愴”」「TOEIC改正“追加され、増加され”来年から難しくなる」などと見出しを打ってニュースを伝えた。
韓国がここまで大騒ぎをしているのは、TOEICへの依存度が非常に高いからだ。TOEICは日本でも就職、昇格、海外赴任などで英語スキルの評価基準となっているが、韓国では自国を“TOEIC共和国”と揶揄するほど、TOEIC重視の傾向がある。
特に、就活生やビジネスパーソンにとっては必須。韓国国内の約1600社が採用や昇進の際に、TOEICのスコアを考慮に入れているからだ。実際に、韓国の受験者数は年間200万人を超えており、その数字は日本とほぼ変わらない。韓国の人口が日本の半分以下と考えると、いかにTOEICを受ける人が多いかがわかるだろう。
韓国の受験者たちの意識も非常に高く、YBM(韓国TOEICプログラム実施機関)のアンケート結果によると、韓国の就活生が考える「就活時に必要な最低スコア」は805点。そのうち32.5%の就活生が「905点以上必要」と答えているという。ある韓国メディアの調べでは、サムスン電子新入社員のTOEICスコアは、900点以上が14.2%、800点台が36.9%、700点台が27.2%となっている。ヒュンダイ自動車の平均スコアも823点。とにかくTOEICで高得点を上げなければ、憧れの財閥企業への入社は困難になるのだ。
そんな現状があるからか、出題形式の変更を発表したETSに対する不満の声も多い。たとえばインターネット上では、「商売上手だなあ。これまでのTOEIC解説書は役に立たなくなるんだから」「ETSは金儲けがうまくいくね」「巨商ETSには誰も追いつけない」といった声が多数見られる。
今回発表された“変更版”は、2016年5月の公開テストから導入される。韓国のTOEIC関係者は、「受験者の立場からすれば、新しい出題形式が負担になることは明らか。多くの人が来年の初導入前に、最大限の高いスコアを獲得しようと躍起になるはず」と話す。
韓国では来年5月まで、TOEIC の“駆け込み受験”が大幅に増えそうだ。
(文=ピッチコミュニケーションズ)