関西電力役員らを含む20名が、福井県高浜町元助役の故森山栄治氏から3億2000万円相当を受け取ったスキャンダルは、時間と共に鎮火しつつある。だが、政治家への献金疑惑なども新たに報じられるなか、これだけの大問題がすでに過去の出来事として捉えられつつある現状に対して、現場の関電社員からも疑問の声が上がっている。
「スキャンダルが発覚した当初から、現経営陣は辞職する気は皆無でした。認識が甘く、ここまで大ごとになるとは思っていなかったんでしょうね。ただ、社内では『マスコミには話すな』と箝口令が敷かれました。八木誠会長が辞任を避けられなくなったのも、検察やマスコミの報道の圧力というよりは、消費者からのクレームや抗議が膨大なものになっていたからです。関電は90人近くが各省庁へと“天上がり”しているので、お上は押さえることができていました。
昨年の台風21号による大規模停電の際には、クレーム対応などに疲れてコールセンターの職員が300人ほど辞職しましたが、今回の騒動ではそれ以上の“大惨事”となっています。抗議が多すぎて、一時期窓口を停止していたところもあるくらいです。それでも抗議電話はいまだに鳴り止まずにかかってきているようです」(関電社員)
関電では今月9日付で八木誠会長、岩根茂樹社長の辞任が発表され、原子力事業本部経験者の役員4名も総務室付へと異動している。そもそも、なぜこれだけ退任が遅れたのか。別の関電社員は、こう明かす。
「基本的にウチの出世畑は原子力部門。そのなかでも、技術畑と事務畑で分かれますが、技術畑がずっと最大派閥でした。過去の会長や社長ら経営陣は、技術畑の人間が大半を占めてきたわけです。それほど原子力部門の影響力は絶大だった。社内では一連の騒動を経て、事務畑の人間が取って代わるのかとみる向きもありました。それほど、経営陣は高浜町を含む、福井の3つの原発とは密な関係にあったからです。
辞任が遅れた理由としては、人員整理の時間が十分になかったからで、そのタイミングを図っていたと思います。ところが、後任候補について、企画畑が長く福井との接点がない人物の名前が上がったのは意外でした。これまでも、問題があった際、要職を辞任する役員は自分の派閥の人間を後任に就けてきたのがウチの歴史だったからです。ただ、結局はこれまでと同じように、退任した経営陣も何かしらの影響力は持ち続けるでしょう」