待遇悪化で社員から不満爆発か
冒頭でも述べたように、今回の騒動を経て関電社内は未曾有の混乱状態にある。事件に関係のない現場の営業社員ですら、訪問先で罵詈雑言を浴び平謝りするという事態はいまだに続いているという。より深刻なのは、株主への配慮だ。旧態依然の企業体質であり、良くも悪くも“お役所”要素が強いが、それが株主への信頼にもつながっていた面もある。だが、その根底は揺らぎつつあるのかもしれない。
「有望な中堅社員たちが株主への謝罪やフォローに回っていますが、当然、株主の反応は冷ややかです。ある社員が革新的なアイデアを出した際、『そういうことは君が役員になってから言いなさい』と一蹴されました。それほど閉鎖的で年功序列の会社ですが、株主に対しては、今回の件を受けて『会社の膿を出し切らないといけない』と説明している。社員からすると、自分たちが関係ないところで、こんな会社都合の謝罪をしないといけないという葛藤もあるわけです。『もう関電との取引はやめたい』と言われることもありますよ。なかには、『こんなことをするために関電に入ったわけじゃない。もう限界です』と、退職をほのめかす社員も少なくありません」(先出社員)
そもそも関電のような電力会社で、これだけ内部から不満の声が上がること事態が稀有でもある。実際に、過去には不満分子や反乱分子が潰されたこともある。それほど“内政が整った”企業でありながら、なぜ今回は社内で疑問を呈する声が上がっているのか。
「シンプルに、給与などの待遇が悪化していることが一因でしょう」
こう話すのは、関西電力の労働組合関係者だ。この関係者によれば、関西電力ではS1ステージからスタートしてS7ステージまで、かなり細かい昇給制度がある。だが、一部を除けば、S3を頭に昇給が打ち止めになることも少なくないという。
「そもそも統括原価方式(予算不足を電気料金値上げで賄う方式)からもわかるように、電力各社は“殿様商売”です。それが、2012年に電力料金値上げに関する批判を受けて、社員の給料に直撃したんです。ボーナスカット、給料5%カットなど、最大で年200万円程度急激に減給されたんです。それ以降、少しずつ回復していますが、まだ基本給のベースは完全に回復していません。いまだにほかの主要電力会社の平均年収よりも、かなり低い水準です。大企業とはいっても、恩恵があるのは一定層の社員だけです。そんななかで社員には、『今が踏ん張り時だからがんばろう』と言葉をかけておいて、経営陣は原発利権で“貢ぎもの”をもらい、巨額の退職金が入るわけです。バカにするのもいい加減にしろ、と言いたいですよ」(労働組合関係者)
岩根元社長は、「すべての膿を出し切るため、徹底的な調査、原因究明、再発防止を確立し、これを実施することが私の努めだ」と述べ、辞任を引き伸ばしてきた。その関電は、経営陣の刷新によって生まれ変わることができるのか。
「この会社はね、何があっても変わることはありませんよ。絶対にね」
ある社員は、吐き捨てるようにこう嘆いた。
(文=編集部)