以前から“疑惑”がたびたび報じられていたとはいえ、女優の沢尻エリカ容疑者が逮捕されたというニュースは世間をアッと言わせたようだ。11月16日、「エリカ様」は自宅に合成麻薬「MDMA」を所持していたとして、麻薬取締法違反容疑で警視庁組織犯罪対策部第5課に逮捕された。沢尻容疑者は自宅で発見されたMDMAについて自分のものであることを認め、取り調べにも素直に応じているという。
警察が前夜にマスコミにリークか
報道によると、沢尻容疑者はすでに尿検査を受けており、簡易鑑定では陰性だったことがわかっている。今後は「本鑑定」が行われる見通しだ。
MDMA は別名「エクスタシー」と呼ばれ、過去にミュージシャンのASKAや俳優の押尾学などの有名人も使用して逮捕されている。元北海道警察警部で薬物使用による有罪判決を受けて服役した経験を持つ稲葉圭昭氏は、「MDMAは化学構造が覚せい剤に似ていて、興奮作用があります。覚せい剤より安いし、錠剤なので使いやすいから、若者に人気があるんでしょう。クラブなどでもかなり出回っているようです。売人にもよるけど、1錠5000円はしないしね。でも、粗悪品が多くて原価はたぶん5円くらい。ぼったくりもいいところです」と説明する。
「やっぱり覚せい剤のように使っていると効き目が弱くなるので、1回の使用量も増えていきます。そうすると、精神障害や心不全の原因にもなりますよ。ヘタしたら死ぬでしょう」(稲葉氏)
なお、TBSは沢尻容疑者が逮捕前夜に自宅を出るところを撮影しており、「15日夜から渋谷区内のクラブを訪れていた」と見られると報道している。そして、クラブから帰宅した16日朝に警視庁が職務質問し、家宅捜索に入ったという。
「もう完全に『クラブで買った』と決めつけているようですが、どうなんでしょうね。前夜からマスコミに『エリカ様逮捕』の話がリークされていた証拠です。まぁ、私が現役の頃も警察はマスコミやヤクザと持ちつ持たれつの関係だったので驚きませんけどね」(同)
それにしても、最近は薬物関連で逮捕される著名人が増えている印象だ。
「著名人といっても、しょせんは末端使用者。一見、警察やマトリ(厚生労働省麻薬取締部)がいい仕事をしているようですが、元を絶っていないのですから、何も変わりません。これからも、次々と誰かが逮捕されるのでしょう。沢尻さんも、もったいないですね。苦労して手にした地位も名声も一瞬にして終わりですからね」(同)
地位や名声、場合によっては生命も失う可能性があるのに、なぜ薬物に手を出す人は後を絶たないのか。
「自分もそうだったけど、薬物に手を出すときは、なぜか『自分だけはやめられる』『今回でやめる』と思っています。使う前に、家族や友だち、仕事や仕事仲間のことはちょっとは頭をかすめるけど、人の迷惑なんか考えられない。自分が薬物をやって気持ちよくなることしか考えてないし、薬物はそんな罪悪感をすぐ打ち消してしまう。それが薬物の恐ろしさですよ。前にも言ったと思うけど、『薬物依存は病気』という考え方は間違っているとは言わないけど、『病気だからしょうがない』みたいに逃げていたら、いつまでたってもやめられませんよ」(同)
絶妙なタイミングに“陰謀論”が浮上するワケ
沢尻容疑者の薬物使用疑惑については以前から一部で報じられていたため、ネット上では「なぜ今、逮捕?」という声も出ている。なかには、安倍晋三首相が集中攻撃を受けている「桜を見る会」への批判をかわすためではないか、と指摘する有識者も多い。
「確かに、(2016年2月に)清原和博が覚せい剤所持で逮捕されたときは甘利明大臣の金銭授受問題がありましたね。このときも陰謀論が出ていました。結局、甘利大臣は辞任しましたが、清原のおかげで報道は最低限だったでしょうからね」(同)
14年5月にASKAが覚せい剤所持で逮捕された当時は、集団的自衛権の行使をめぐる憲法論議で安倍政権が窮地に立たされており、今年3月にミュージシャンで俳優のピエール瀧がコカイン使用で逮捕されたときは、米軍基地をめぐる沖縄県民投票で辺野古基地建設反対派が圧倒的多数を占め、安倍政権に逆風が吹いていた。このようなケースは、過去にもいくつか見受けられる。
「それらが当てはまるかどうかはわからないけど、権力者側の悪事を隠すためのカモフラージュに利用されるというのはありますね。そもそも、すぐに逮捕しないでタイミングを合わせるというのは、警察や官邸は考えていると思いますよ。
もともと、警察は毎月『全国暴力団総合対策特別強化月間』『暴走族追放強化月間』『けん銃取締り特別強化月間』とかを決めているけど、この月間に合わせて逮捕するんです。今は私が現役だった頃のような厳しいノルマはないけど、事前に事案を決めておいて、『暴力団対策強化月間にヤクザを逮捕する』みたいなことはまだやってるでしょう。
今回の逮捕で誰が得をするかを考えたら、やっぱり権力ということかなぁと。芸能人もこういう権力に利用されて気の毒な感じだけど、まぁ薬物には手を出さないことです。私も懲りました」(同)
沢尻容疑者の逮捕については、約1カ月前に警視庁に情報提供があり、内偵捜査が進められていたという。結果的に、時の政権にとっては絶妙なタイミングでの逮捕となったわけだ。もちろん、薬物は「ダメ。ゼッタイ」だが、著名人の逮捕のタイミングをめぐっては、今後もさまざまな臆測を呼びそうだ。