12月3日夜、神戸山口組の若頭代行で山健組のトップでもある中田浩司組長が殺人未遂と銃刀法違反の疑いで逮捕された。報道などによると、今年8月に対立組織である六代目山口組系弘道会の関連施設前で弘道会の組員を銃撃して、3カ月の重傷を負わせたという。
この事件の背景には、4月に発生した山健組の與(あたえ)則和若頭襲撃事件があるようだ。組織のナンバー2である若頭が弘道会系の組員に刺されて重傷を負ったことで、報復の可能性が指摘されていた。以下、暴力団事情に詳しい作家の宮崎学氏が分析する。
中田組長逮捕への疑問
神戸山口組の大幹部の逮捕は、関係者にはかなりの衝撃でしょうね。組織の運営にも影響があるはずです。
最近では、與若頭の襲撃のほか、10月の神戸市の山健組事務所前での組員射殺、11月の尼崎市での神戸山口組の古川恵一幹部の射殺など、六代目山口組から神戸山口組に対する襲撃が目立っていたのですが、中田組長が逮捕されたことで、今後は報復の応酬が続くかもしれません。
ところで、これは本当に中田組長の「仕事」なんでしょうか。私にはいくつか疑問があります。普通に考えたら、組織の要職にありながら、その責任を捨ててまで末端の組員を襲うとは考えにくいです。幹部が逮捕されたら組織の運営に支障が出ますから、中田組長が「組織がつぶれようが、何がなんでもカエシ(報復)をする」と考えるのは不自然な気がします。だいたい、そこまでして狙うなら、相手は六代目山口組のトップである司忍組長か高山清司若頭だと思いますしね。
それに、証拠となった監視カメラの映像もあやしいものです。報道によると、ヒットマンが犯行時に乗っていた黒いバイクから白いバイクに乗り換え、中田組長の自宅に入っていくところを近くの監視カメラがとらえており、このヒットマンの顔が「中田組長本人の可能性が高い」と鑑定されたというんですね。「可能性が高い」というだけで、「中田組長本人」と断定されたわけではないのです。
現在、中田組長は黙秘していると伝えられていますが、なぜ否認ではなく黙秘なのでしょう。本当の実行犯の居場所を答えられないからではないですか?
年内にも「特定抗争指定暴力団」に指定へ
そうはいっても、このまま中田組長は「実行犯」として起訴されるのでしょう。これは、警察によるヤクザ弱体化の一環であると私は考えます。
すでに警察は、六代目山口組と神戸山口組を年内にも「特定抗争指定暴力団」に指定すべく調整を始めたといいますが、効果は微妙な気がします。特定抗争指定暴力団とは、指定暴力団のうち「対立抗争状態にあり、市民の生命・身体に重大な危害を加えるおそれがあるとして、都道府県公安委員会が指定した組織」を指し、「縄張りとする地域を中心に『警戒区域』を定め、組員が区域内で組事務所に出入りしたり、5人以上集まったりすればすぐに逮捕できる」としています。指定期間は3カ月で、更新もできます。
もっとも、両組織の本部事務所の使用制限はすでに行われていますから、12月13日の事始め式の開催などにも影響が出ているようです。