弁護士法人アディーレ法律事務所は、「今だけの期間限定で『返金保証キャンペーン』を実施いたします!」として、約1カ月間のキャンペーン期間中に契約した場合は、着手金が無料になると宣伝していたが、実際は約5年にわたりキャンペーンを続けていた。
これに対して消費者庁は今月16日、これが景品表示法上の有利誤認に当たるとして、再発防止を求める措置命令を出した。同庁の発表によると、アディーレは、景品表示法に違反する行為を行った旨を記載した「お詫びとお知らせ」と題する社告を新聞に掲載し、表示等の管理を行う審査室を設置するなどの措置を採ったという。この「今だけお得!」のキャンペーンは、まるで何年も「閉店セール」を行っている安売り時計店のようだ。
アディーレは、全国に72もの本支店を展開する大規模弁護士法人だ。消費者金融から払いすぎた利息を取り返す、いわゆる過払い訴訟にいち早く取り組み、CMなどで知名度を高めて圧倒的なスピードで成長を遂げた。
報道によるとアディーレ広報部は「毎月継続の有無を判断しており、不当表示との認識はなかった」とコメントしているという。「法律事務所なのに景品表示法の正しい解釈ができていなかったのか」との批判の声も上がっている。また同業者からは、「あそこは法律が苦手な法律事務所だから」との失笑を買っている。
アディーレがメイン業務とする過払い訴訟は、実際に債務者が支払った額さえわかれば、自動的に取り返す額が決まる。大量かつ同時に事件を処理することができ、実入りもいい。法律的な解釈などは、まったくといっていいほど不要で、難しい問題はほとんどない。極端な話、弁護士でなくても処理が可能な事務仕事が多いのだ。
アディーレは広告露出を最大限高めることで顧客を全国から集め、金銭的には大成功を収めている。しかし、これに前から煮え湯を飲まされてきたのは、ほかならぬ弁護士会だ。アディーレと同じ東京弁護士会に所属する弁護士は、次のように語る。
「弁護士会は『法律相談会』を開いて顧客を集めて、会に所属する弁護士へ事件を受任させる大きなルートになっていた。しかし、アディーレは広告を駆使して見込み客を大量に奪い取っており、弁護士会の存在意義を失わせる行動を取り続けている。役職についている弁護士の中には、『あの事務所はいつか絶対に潰す』と公言する人もいる」
実際、弁護士会の法律相談センターはどこも赤字で、運営が危ぶまれているという。弁護士なのに法律の解釈を間違って行政処分を受けるような事務所が、世間では大手事務所として知名度を高めている。弁護士会は、これを機会として広告倫理を設け、それに逸脱した事務所にはなんらかの制裁を加えるような仕組みをつくらなければ、弁護士界全体が社会からの信用を失ってしまうことになりかねないだろう。
(文=則本正義/フリーライター)