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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

致死率50%以上…中国、新型肺炎に加えて鳥インフルエンザも同時流行、経済機能停止も

文=相馬勝/ジャーナリスト
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写真:AP/アフロ

 中国では湖北省武漢市を発生源とする新型コロナウイルスによる肺炎が中国全土に拡大、累計の感染者数が1万人の大台を超え、世界保健機関(WHO)も緊急事態を宣言。さらに中国国外では初めてフィリピンで40代の中国人男性が死亡するなど、事態は極めて危機的な状況を呈しているが、湖北省に隣接する湖南省では「H5N1型」の鳥インフルエンザが流行していることが明らかにされた。

 鳥インフルエンザはヒトへの感染数は少ないが、致死率は50%以上と極めて高いだけに、新型コロナウイルスの世界各地への感染拡大とともに、鳥インフルエンザの流行によって、中国へ渡航禁止や自国民の中国からの退避勧告などを決める国が増えれば、中国の国際的な孤立が深刻化し、中国経済が機能停止状態に陥る可能性も否定できない。

致死率はSARS以上

 中国農業農村部(日本の農林水産省に相当)は2月1日、湖南省邵陽市の養鶏場で、ニワトリがH5N1型の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認されたと発表。この養鶏場には7850羽のニワトリが飼育されていたが、そのうち4500羽がウイルスに感染して死亡したという。同省は「地元当局が感染の確認を受けて、予防的に1万7828羽を殺処分するなど、感染が広がらないよう処理をした」ことを明らかにした。

 米国疾病管理予防センターによると、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染した例は2003年から19年の16年間で、世界中で計861例が報告されている。その原因となっているのは、養鶏場などで働いていて、感染したニワトリと密接に接触したためであることがほとんど。致死率は50%以上と極めて高く、感染した861人のうち、455人が死亡。中国だけでは過去16年間に53件の鳥インフルエンザ感染が報告されており、31人が亡くなっているという。

 これに対して、2002年から03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、感染による致死率は約10%。武漢が発生源の新型コロナウイルス感染の場合は約2%となっており、これらに比べるとH5N1型の鳥インフルエンザウイルスによる人間への毒性は極めて強力なことがわかる。

 同センターは「ヒトからヒトへの感染はほとんど報告されていない」としているが、中国では一緒に生活していた「きょうだい」や「親子」間での感染が原因で死亡したケースも報告されており、鳥インフルエンザが今回の新型コロナウイルスのようなヒトからヒトへの感染がまったくのゼロとはいえないようだ。

 新型コロナウイルスの場合も、中国政府は発生当初には「ヒト・ヒト感染はない」と報告していたが、感染者の死亡例が増えるにつれて、前言を撤回している。人間の体内に入ったウイルスが突然変異して、ウイルスの感染力が強くなった可能性も考えられる。

国際社会で対中警戒感強まる

 鳥インフルエンザ流行の兆しが見えたことで、中国への国際的な警戒感は強まりこそすれ、弱まることはない。SARSの場合、02年秋に発生が確認され、感染の終結宣言が出されたのは03年7月だった。このため、SARSのコロナウイルスは暑さに弱いとの見方が強いが、新型コロナウイルスがSARSと同じ性質かどうかは現段階では不明。これから半年間は油断できない。

 新たな鳥インフルエンザの流行で、国際社会の対中警戒感は一層強まることは確実なだけに、習近平国家主席を最高指導者とする中国共産党政権は、その存立をかけて、年初から大きな危機を迎えているのは間違いない。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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