軽減税率の対象品目について、酒類を除く食品が8%、外食は10%と線引きされた。食料品や外食の定義について議論がされ一応の決着がついたなかで、週2回以上発行する「新聞の定期購読料」に軽減税率が適用されることについて大きな異論は出なかった。
新聞は民主主義と活字文化を支える重要な社会基盤であり、それを守るためには、知識への課税は最小限度にとどめるべきだ、といった論調が支配的。麻生太郎財務大臣も答弁で「日常生活における情報媒体として、全国あまねく均質に情報を提供し、幅広い層に日々読まれている」と指摘し、読者の負担軽減のため新聞への軽減税率適用の妥当性を説いた。
だが、本当に低所得者や地方在住者でも、適切な価格で新聞を購入できる環境を維持することが重要だと、多くの国民が認めているだろうか。
一例をあげれば、最近の大学生は就職活動の時期を迎える頃に、会社の面接で時事問題を聞かれるので新聞を購読し始めるというケースがほとんどだ。実家から通学する学生でも、家で新聞をとっていないケースは珍しくない。人口1000人当たりの全国の新聞発行部数をみると、1968年時点で331部だったのが、98年には427部になったが、それ以降は次第に減少し、2011年には30年前の水準の383部になっている(日本新聞協会「日本新聞年鑑2014」より)。消費者の強い需要を背景に、ハイペースの値上げが一因で新聞離れ、文字離れが起きているのは確かだ。
今や若者にとってはインターネットで情報を得る時代になり、紙媒体の新聞がこれまで果たしてきた速報性についても役割は終わったといえるだろう。新聞が豊かな国民生活を維持するのに欠かせない財として認識されているとは思えない。
公共料金は軽減税率対象外
軽減税率の新聞への適用で思い出されるのが、90年代に展開された新聞、書籍・雑誌の再販売価格維持制度の存廃をめぐる議論だ。著者は97年に公正取引委員会に設けられた「政府規制等と競争政策に関する研究会」で再販問題を議論した。
再販制度とは簡単にいえば、定価でしか販売することができない制度だ。賛否両論があったなかで、結論的には再販制度を維持すべき理由に乏しく、基本的には廃止の方向で検討するが、「文化・公共的」観点から配慮する必要があり、ただちに廃止することには問題がある、とされた。