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再販制度存続を主張する根拠はこうだ。再販のない国の新聞の普及率は低い。国民の知る権利の充足の手段として、どこでも読みたいと思う新聞を容易に合理的な価格で入手でき、また戸別配達も再販制度があるから可能となる。書籍・雑誌についても定価で販売することで、文化的価値の高い本も書店に並び、国民の文化水準を維持するのに重要だ。もし諸外国のように再販制度を撤廃すれば、新聞の宅配制度も維持できなくなり、地方の書店はマンガ本など売れる本だけが書棚に並ぶことになる、というのだ。
今回の軽減税率の新聞への適用についても、この再販制度存続と同じような根拠だ。ただ、書籍・雑誌両協会と同調して行動しなかった点は異なる。知識への課税は最小限度にとどめるべきなら、書籍や雑誌はどうなのか。今回は塾、カルチャースクールの授業料はどうなのか。生活必需品だから軽減されるなら、冷蔵庫、携帯電話、電気やガス、水道、郵便をはじめとする公共料金はなぜ軽減税率の対象にならないのか、といった疑問は当然だ。
再販制度の存続の是非で、新聞各紙が「規制緩和に聖域なし」とキャンペーンを張りながら、一方で再販は維持すべき、と矛盾する報道をしていたことを思い出す。今回の軽減税率適用も、新聞に対する信頼度の大幅な下落を招きかねない。
(文=井手秀樹/慶應義塾大学名誉教授)
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