新型コロナウイルス感染症などの患者が検査に訪れる際、院内感染の回避を図るために兵庫県西脇市の西脇病院が始めた「発熱外来」が注目を集めている。テレビなどで紹介されている韓国の「ドライブスルー方式」の検査とどう違うのか、現場医師の視点から東京慈恵医科大学内科講座消化器・肝臓内科助教で日本医師会認定産業医の星野優氏に解説してもらった。
神戸新聞は記事『新型コロナなど院内感染回避へ 西脇病院に23日から発熱外来』(21日付朝刊)で、西脇病院が県東健康福祉事務所や開業医から紹介を受けた発熱患者を対象に、医師らが患者のトリアージ(治療の選別)を実施する方針であることを報じた。
同記事によると、新型コロナの感染者が確認された影響で、北播磨総合医療センター(小野市)と加東市民病院(加東市)で、外来診療や救急搬送などが受け入れ停止になり、地域医療の機能不全が危険視されていた。そのため、地域の拠点病院の西脇病院が閉鎖になる事態を防ぐため発熱外来を開設し、西脇市多可郡医師会の協力を得て運営することとなったという。同記事では「発熱外来は病院南側駐車場に設置したテントで実施し、通常の病院の動線と切り離して運用。電話口を通じ、院内の患者サポート相談窓口で看護師らが症状を確認した後、診療の予約を受け付ける。自家用車での来院と診察が可能となっている」と解説している。
一見、韓国で実施されている「ドライブスルー方式」の新型コロナウイルス検査が彷彿とされる。今回の取り組みは、従来の医療体制とどのように違い、何がポイントなのか。星野氏は次のように解説する。
星野氏の解説
「ここ最近の報告によれば、欧米での大流行と比較して、日本では『COVID-19 (通称:新型コロナウイルス)』への重症化対策は比較的うまく行っていると考えられております。
要因としては諸々挙げられますが、専門家会議などからは、他国のように『ドライブスルー方式』による無症状の希望者への検査を行わないことや、各地に発生するクラスター(感染者集団)への迅速な対応が功を奏している可能性があると指摘されています。
また、日本には世界的に類を見ない数のCTスキャンがあり、肺炎をより早期に発見できるという部分も見逃せません。
さて、最近話題の『発熱外来』ですが、いわゆる『ドライブスルー方式』の検査などとはまったく異なります。
現状、地域にもよりますが、かかりつけの方が『COVID-19』感染疑いがあったとしても、基本的にはかかりつけの科が対応している医療機関も多くあります。その場合、他の疾患で通院中の方々との隔離なども難しく、医療機関自体がクラスター化しかねません。
『発熱外来』として一般外来と区分けできれば、入り口から診察、検査などの動線内での感染対策をある程度コントロールすることができ、医療者側も、通常と比較するとよりよい感染対策体制で診療に当たることができます。
もちろん、『発熱』=『COVID-19』ではないため、発熱患者が集まることで感染が広がってしまう可能性は完全には否定できませんが、先に述べたように、感染が疑われる方とまったく別の疾患の方々を同じ場所で診るよりは、比較的安全かつ、感染対策としてもベターではないかと考えられております。
今後の見通しはいまだ不透明であり、予断を許さない状況であることには変わりなく、『本物の』感染症専門家の方々の公式な意見や対策方法などを注視していく必要があると考えます」
(文=編集部、協力=星野優/日本医師会認定産業医・内科医)