新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍晋三首相は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を4月7日に発令する方針であることが報じられた。感染者が急増している東京都を含む7都府県が対象となるようだ。
また、安倍首相は国内総生産(GDP)の2割にあたる事業規模108兆円の緊急経済対策を実施することも表明し、「大変な困難な状況に直面している家庭や中小・小規模事業者に対し、6兆円を超える現金給付を行う。そして、雇用を守り抜いていかなければならず、無利子融資を民間金融機関に拡大するとともに、前例なき26兆円規模で、納税や社会保険料の支払い猶予を行い、事業の継続を後押しし、雇用を守り抜いていきたい」と述べている。
これに先立ち、4月1日には、日本郵政の全住所配布システムを利用して「全国5000万超の全世帯に、布マスクを2枚ずつ配布する」と発表したが、この政策には批判が相次ぎ「アベノマスク」と揶揄されている。
そんな中、政府の「本当の狙い」をめぐって波紋が広がっている。4月6日、テレビ東京公式の総合ニュースサイト「テレ東NEWS」では、官邸キャップの篠原裕明氏による解説が公開された。
「マスク2枚配布」という政策の意味合いについて取材を重ねた篠原氏は、政府側の狙いについて語る前に、以下のように前置きした。
「政府側の代弁をするつもりはまったくなくてですね。ただ、ある程度政府側にも狙いがあって、その狙いをみなさん理解していただいた上で、さらに批判をしたり、納得する方もいるかもしれませんけれど」
篠原氏は、今回の政策について立案にかかわった関係者に「この政策はどういう狙いですか」とすぐに聞き、以下のような説明を受けて「なるほど」と思ったという。
「高齢者のみなさんを、まず安心させる対策なんだ。布マスクっていうのは洗えば何回も使えるんだ。2枚配れば、一定程度は使える。高齢者の人が朝からドラッグストアとかに並んで、若い人が買えないって苦情きてるじゃないですか。布マスクを配れば、高齢者の人はある程度しのげますから。高齢者の人が安心して、そういう列に並ばないで済むようになるんだ。そうすれば、ドラッグストアにあるマスクが、働いている人や若い世代にも行き渡るようになるんじゃないか。そういうための政策なんだ。一種の需要調整の政策なんです」
この説明を聞いて、篠原氏は「まずは高齢者のみなさんが安心すれば、朝から高齢者の方がドラッグストアに並んで若い人が買えないということが一定程度抑えられる」との感想を抱いたという。
また、「1世帯につき2枚」という決定についても、同様に以下のような説明を受けたという。
「お子さんに向けては小学校や中学校を通じてこれから配るから、一家が4人であれば、ある程度充足できる数になるんだ。そういう見立てのもとの政策だ。ちょうど1億枚の布マスクが調達できたので、全国5000万世帯に公平に2枚ずつ配る。郵便局のシステムを使えば、どこに家があって、どこが空き家で配らなくていいとか、そういうことが全部わかっているので、一斉にバッと配れるんだ。2枚じゃ足りない2世帯住宅の家とかがあれば、追加で出していく。でもとりあえず、じゃあこの家には何枚ってひとつずつ調べていったら時間がかかっていくんで、まずは配る。そういう政策をとったんだ」
さらに、「子どもには学校を通じて配る」という点については、以下のような説明を受けたという。
「教科書を配るシステムっていうのは各学校の何学年に何人、人がいるって全部わかっているわけですよ。そのシステムを使って配送するので、これもすみやかに配送できるはずだ」
これを踏まえて、篠原氏は「ただ、学校にしばらく行けないという状況ですから、これがいつ本当に生徒に渡るかはわかりませんけども。政府としては、それなりに工夫をして考えて実行した政策なんだということです」と語った。
さらに、これまでの内容をもとに、以下のように総括している。
「確かに高齢者の方が安心して、スーパーとかドラッグストアに並ばないでくれれば、それなりに現役世代にもマスクっていうのが回ってくるかなぁとも思いました。配送システムの工夫も『なるほどなぁ』と思いました。ただ、これは安倍総理や官房長官が、やっぱり十分に説明しているとは言えないですよね」
この解説に対して、ネット上では「簡潔でわかりやすい」「テレ東の良心的な報道でありがたい」といった声が上がる一方で、「なんか高齢者をバカにしすぎな気がする」「いまいち説得力ないな」「だいぶ苦しい言い訳だし、批判されたから辻褄合わせたっていう後付け感がすごい」「それなら高齢者の家だけに配ったほうが効率的では?」という声が上がるなど、賛否両論が飛び交っている状況だ。
安倍首相は4月7日に緊急事態宣言を発令して翌8日から効力を発生させる方針のようだが、果たしてどうなるのだろうか。
(文=編集部)