学費の高い日本から海外に人材流出の危険も
一方、日本はといえば、国公立でも学費が無料というわけではなく、比較的安い文系でも「私立大学の半額」にもならない場合が多い。その分、奨学金が充実しているかといえば、確かに各種奨学金制度や足りない部分を補填する金融商品があることはあるが、そのほとんどは貸与型、つまり卒業後に返済しなければいけないものだ。
「私は、父がEU(欧州連合)圏の出身で母が日本人。日本でインターナショナルスクールに通っていました。進学を考えた時、日本の大学は考えませんでした。大検も入試も英語では受けられないし、学費も生活費も高い。
そこで、フランスの大学への進学を希望しています。日本の大検のような試験を受け、その結果待ちの状況。学費はほとんどかからないし、授業も英語が主。国際的評価も高い。私は国際的な企業で働きたいのですが、おそらく同じような意思を持つ学生が各国から集まってくるでしょう。今からワクワクしています」(18歳の男性)
EU諸国の大学は、留学生に対しても学費を低く設定している。その背景には、優秀な人材を呼び込むという目的もあるだろう。そのため、学力が低い人は入学できないし、入学後も勉強をおろそかにすればすぐに落第してしまうような質の高い授業を行っている。
一方、アメリカやオーストラリアなどは大学の学費が日本以上に高い半面、返済義務のない給付型の奨学金が充実している。『学費が低い』か『給付型の奨学金』があれば、進学のための費用は低く済む。しかし、やはり「誰でも」というわけではなく、「優秀」な人材確保のための方策なのである。
日本は学費も高く、奨学金も貸与型。そうなると、優秀な人材は海外に流出してしまう可能性が高まりかねない。一方で、みちのく未来基金のように4つの私企業が合同で「完全給付型」の奨学金制度を立ち上げ、運用している現実がある。そして、同基金の存在によって、被災地である東北地方では優秀な人材がさらにレベルを上げて地元に戻ってくるという現象が起きている。
同じような活動を国レベルで行っていかない限り、日本から優秀な人材がどんどん流出していってしまうのではないだろうか。被災地の復興支援の中に、日本の教育現場の問題点が見えてきた。
(文=石丸かずみ/ノンフィクションライター)