組織・人事コンサルティング会社のマーサーは、「2016年世界生活環境調査(Quality of Living Survey)‐都市ランキング」(以下、同レポート)を発表した。
企業が社員を海外派遣するときは、現地の生活環境を把握しておく必要がある。派遣先都市と自国との生活環境差(ハードシップ)に応じて、手当てを支給するシステムは多くの企業で採用されている。その生活環境や格差を客観的かつ定量的に把握することを目的に毎年発表されているのが同レポートだ。海外駐在員への適切な報酬とインセンティブのための参考資料とされている。
日本では一般的に「海外赴任手当」のような名目で支給されているケースが多い。また、国内に限っても、国家公務員には「寒冷地手当」という制度があるが、これも仕事環境が厳しいところでは手当てを支給しようということである。
さて、今回のランキングを見ると、ヨーロッパの都市が上位に多くランクインしている。ウィーン(オーストリア)が前年に引き続き、7年連続世界で最も生活環境の水準が高い都市となった。2位にチューリッヒ(スイス)、3位にオークランド(ニュージーランド)、4位にミュンヘン(ドイツ)、5位はバンクーバー(カナダ)と続いている。最下位は230位のバグダッド(イラク)。
日本では東京が44位で最高位となり、神戸が46位、横浜が49位、大阪が58位となった。アジアで最高位は26位のシンガポールであり、東京はその次だ。その他の主要都市では、香港(中国)が70位、台北(台湾)が84位、上海(中国)が101位、北京(同)が118位という結果になった。
ニュージーランドとオーストラリアは上位にランクされる都市が多く、シドニーが10位、ウェリントンが12位、メルボルンが15位だ。
ハードシップ手当
東京が44位というのは、果たして喜ぶべき順位なのかどうか、簡単に判断できない微妙なところだ。たとえば、日本は世界でもっとも犯罪発生率の低い国であり、もっと高く評価されてもよさそうな気もする。マーサー ジャパンのコンサルタント、田中耕一氏は次のように説明する。
「当社で提供しているのは、国をまたいで仕事をする場合の環境差を指標化したものです。ただ、それは駐在員の『インターナショナルな視点』の指標化が切り口で、日本人基準ではありません。査定に必要な39項目には、各項目ごとにウエイト配分があり、最終的な指標となります」