自覚が足りない、とはこのことだ。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令されてから2日後の4月9日、立憲民主党の高井崇志衆議院議員が新宿・歌舞伎町のセクシーキャバクラに行っていたことが明らかになった。政府が国民に外出や外食の自粛を要請する中、こともあろうに国会議員自ら濃厚接触を求めに行っていたのである。
「高井議員は安倍晋三首相に対して『民間企業は飲み会を自粛しているのに、11日間のうち9日間も会食をしているとは何事ですか。総理の危機感のなさが国民のみなさんを不安にしている』などと批判していましたが、自分は風俗店に行ったわけです。また、この件を報じた週刊誌には、高井議員が店内で発した卑猥な言動も詳細に記されており、自民党議員からは『お前こそ、危機感なさすぎじゃ!』と突っ込まれています。まさにブーメランですね」と、政治記者があきれて語る。
一般的に、精力的に活動する人は性欲が旺盛といわれる。筆者も男である以上、風俗店に行くことを否定はしない。平時なら笑って済まされることだが、時は緊急事態宣言下である。同宣言にはコロナ感染拡大による医療崩壊を防ぐ目的もあり、国民の代表たる政治家は模範となる行動を取らなければならないはずだ。しかし、自ら感染リスクを背負いに行くとは何事だろうか。
高井議員は立憲民主党に離党届を出したが受理されず、党本部から除籍処分を受けた。抗議の電話が鳴りっぱなしなのだろう。この件について話を聞くべく高井議員の事務所に電話をしたが、つながることはなかった。高井議員は東京大学出身のエリートだが、危機感と判断力は著しく欠如していたようだ。
六本木で深夜まで合コンのプロ野球選手
高井議員ほどではないが プロ野球界でも自覚や危機感のなさが露呈する出来事があった。
開幕が延期となり、オープン戦の無観客試合が行われていた3月16日の夜。埼玉西武ライオンズの金子侑司選手と相内誠投手らが六本木の会員制バーでグラビアアイドルらと合コンし、深夜までカラオケなどで盛り上がったことが週刊誌「FLASH」(光文社)に報じられたのだ。
誌面には、くわえタバコで入店する金子選手の写真も掲載されている。プロ野球選手がタバコを吸うのは今に始まったことではないが、球団が外出や外食の自粛を求めていた中での行動である以上、非難されても仕方ないだろう。
「タバコは私も吸っていましたから、問題じゃありません。しかし、今の時期に合コンはやるべきじゃない。なぜなら、もし自分が感染したら、チームメイトにも感染させるリスクがあるからです。野球人としての自覚が足りなすぎる」と、ある元プロ野球選手は語ってくれた。
金子選手が夜遊びをしていた翌週には、阪神タイガースで藤浪晋太郎投手を含む3選手のコロナ感染が判明している。プロ野球選手として自覚が足りないと言われないよう、今は遊びを控えて開幕に備え、トレーニングを重ねておくべきだろう。
至近距離で同じ牌を触る麻雀店の感染リスク
政治家やプロ野球選手だけではない。一般人にも、危機感の薄い人が見受けられる。緊急事態宣言が発令され、東京都の小池百合子知事が休業要請の対象となる業種を発表したことで、今や多くの店が休業や時短営業を余儀なくされている。一方で、休業要請の対象であるにもかかわらず、変わらず営業を続けている店も少なくない。
「麻雀店」も、そのひとつだ。客として訪れたというタクシードライバーが語る。
「タクシーを流しても深夜の客がまるでおらず、あまりに暇なので、仕事の途中に対局してきました。客は8人いて、4卓のうち2卓が埋まっていましたね。対局後、調子のよかった客が乗客になってくれて、1万円ほど使ってくれました」
風営法により、麻雀店の営業は深夜0時までと決まっている。しかし、実際は0時を過ぎてもカーテンを閉めて営業を続ける店が大半だ。これも平時であればお目こぼしの範囲内なのだろうが、今は緊急事態である。同卓者との距離が近く、同じ牌に触れ合う麻雀のコロナ感染のリスクは、決して低くない。
今やパチンコ・パチスロ店も休業が相次いでおり、麻雀店にも同様の対処が求められる。問題なのは、セクキャバと同様に休業補償がなされるか否かが不明瞭な業種であることだ。風俗営業にかかわる店が営業を続ける一番の要因は「政府や地方自治体が休業補償を明言しないため」であろう。
アメリカ在住の筆者の弟いわく、アメリカではすでに緊急経済対策として、一般市民に現金が配られ始めている。今のような非常時にわかるのが「政治家としての真価」である。安倍首相よ、一刻も早く決断しないと国民にそっぽを向かれますぞ。
(文=後藤豊/フリーライター)