新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、民放キー局各局にバラエティ番組やドラマなどの新規収録中止の動きが広まっているが、複数の感染者が確認されたテレビ朝日は17日から3日間、東京・六本木の本社を封鎖し全フロアの消毒を行うと発表した。
テレ朝は9日、本社に勤務するグループ企業の30代女性社員が新型コロナに感染したことを発表。その後、12日には報道番組『報道ステーション』のメインキャスター富川悠太アナウンサーの感染を明らかにした。15日には同番組のチーフディレクター、チーフプロデューサー(ともに40代男性)も感染したことも判明したが、テレ朝関係者はいう。
「すでに社内では可能な限りテレワークを取り入れていますが、“完全封鎖”は難しい。全館消毒後の20日以降も当分は来客者の入館は受け付けませんが、封鎖中の3日間は報道など生放送の番組に携わる一部のスタッフは出勤しますし、会社は本社に勤務する各制作会社に対し、緊急時の対応に備え一人は出社するように要請しています」
悩ましい富川アナの処遇問題
本社封鎖という決断に至ったテレ朝だが、同局の顔ともいえる『報ステ』の関係者から複数の感染者が出たことは、大きな驚きを与えた。同局の発表によれば、富川アナは今月3日から4日にかけて38度の発熱症状がみられたものの平熱に下がり、6日から9日は出勤して『報ステ』に出演。しかし7日以降、声がかすれたり息切れ、息苦しさの症状が出ていて、10日に病院に入院し、11日にPCR検査を受け陽性が確認されたという。
15日放送の『報ステ』内では、富川アナのコメントが読み上げられ、より詳細な症状や経緯が明らかにされた。発熱して2日目の4日には、家族が都内の相談窓口に電話した上で「様子をみるように」と言われたことや、9日昼にはチーフプロデューサーにLINEで「体温は平熱で倦怠感や味覚嗅覚の異常等もなくどう判断してよいものか」「きょうの放送を乗り越えれば休むことができる」などと相談していたことを明らかにした。さらに、富川アナは「なお、3月下旬から大人数で飲食する機会もなく、外部での取材もなかったので、感染経路については思い当たることがありません」と説明した。
「もちろん富川アナもメインキャスターとして感染を避けるべく、細心の注意を払って行動していたでしょうから、富川アナを批判すべきではありません。ただ、発熱後も出演を続けたということについては世間から疑問の声も出ており、他局の報道番組でも批判的なコメントが出ています。『報ステ』はこれまでコロナ関連では政府の対応を批判したり、視聴者に感染拡大を防ぐための具体的な行動を再三にわたり呼びかけてきた。こうした事実もあり、もし今後も富川アナが『報ステ』のキャスターを続けると、どうしても視聴者の側に違和感が生じてしまう恐れもある。
そのため局としては、富川アナを降板させる方向だという話も漏れ伝わっています。ただ、感染を理由に降板させると、それはそれで批判を浴びかねず、かといって続投させても視聴者から“どうなのか”という反応も出るので、富川アナの自発的な申し入れというかたちを取るのではないかという声もあります。いずれにしても、“降板やむなし”という空気なのは確かですね」(テレ朝関係者)
テレ朝本社で働く別の関係者は語る。
「最初に感染者が出たのも4階。『報ステ』のスタジオも4階なので、とにかく上司からは『4階は絶対に通らないでくれ』と注意喚起されています。しかし、富川アナのデスクがあるのは2階のアナウンス部ですし、7階のコンビニや食堂だって利用しているはず。どこに感染するリスクがあるのかは誰もわからないので、私は出社したくないと直属の上司に直談判しました。テレワークを否定までされないまでも、最後まで渋い顔をされました。
会社は、社員全員がテレワークでは不都合があるといまだに言っています。誰が出社して誰がテレワークなのか、こっそりアンケート調査するなどして、同僚の間でも不安が広まっています。この状況で率先して出社したいという人はいないと思いますけど、口に出しづらいのも現実です」
テレ朝に限らず、テレビ各局としては悩ましい日々が続きそうだ。
(文=編集部)