1月に始まった社会保障・税番号制度、通称マイナンバー制度。開始から5カ月が経過したが、カードが発行できない自治体が続出し、同じ番号が複数の人物に割り当てられるなど、問題が絶えない。お隣の韓国では、日本に先駆けてマイナンバーに似た「住民登録番号制度」が実施されてきた。
13桁の番号は生年月日・性別・出身地・個人検証番号を組み合わせたもので、それを見ただけで個人情報がある程度わかってしまう代物だが、近年、番号の流出被害が急増、社会的問題になっている。そのため韓国政府は、制度開始から約48年ぶりに住民登録法の改正を決定。ついに来年5月から、住民登録番号の変更が許可されることになった。
しかし、政府が公開した変更手続きというのがやけに厳しく、変更できるのも番号の一部のみ。流出によって財産的損害や命の危険があると本人が直接立証できなければ、変更は難しいという。「自分の住民登録番号を完全変更したい」と願う韓国人が大勢いる中、どこか中途半端になってしまった法改正について批判が続出しているようだ
そもそも、韓国が住民登録番号制度を始めたのは、朝鮮戦争後に韓国に潜入する北朝鮮からのスパイを識別するためだったといわれている。いまやそのような目的もすっかり忘れ去られ、親が出生届を出した瞬間から死ぬまで一生ついてまわる個人のアイデンティティ的な存在として定着している。
というのも、いつからか行政機関や銀行はもちろん、インターネット上のあらゆるサイトで新規登録の際に住民登録番号を要求。現在はだいぶ改善されたが、数年前までは住民登録番号がないとネットすら満足に利用できない状態だった。それだけに「気づいたら乱用していた」という人も数え切れない。
そのため、当然のごとく、ネットに散乱している住民登録番号をハッキングし悪用する集団が続々と登場した。現在、韓国では住民登録番号1個につき5~35ウォン(約0.5~3.5円)で取引されており、韓国政府が大まかに把握している流出件数だけで1億3000万件に及ぶという。
2015年の韓国の人口が約5100万人であるから、ほぼ全国民が平均2回以上の流出被害に遭っている計算になる。もはやオープンソースといっても過言ではないのだ。
そんな状況下にあって韓国国内では、「13桁の番号を全部任意に組み合わせられるようにするべきだ」あるいは「なくすべきだ」といった声が高まっている。変更についても、より簡単な手続きにしてほしいと声が上がっているが、政府関係者は「そうすると犯罪隠蔽や身分の偽造などの心配がある」と発言し、腰はかなり重い。これを聞く限り、住民登録番号をめぐる韓国政府と国民の対立は、当分の間続きそうだ。
日本も、マイナンバー制度で韓国の二の舞いになならないことを切に願う。
(文=S-KOREA)
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