新型コロナウイルスの感染拡大にともなう給付金・貸付金の詐欺が横行しそうだ。コロナの給付金といえば、全国民に一律10万円を支給する特別定額給付金が有名だが、中小企業向けの「持続化給付金」もある。これは、コロナの影響で今年1年のどこかの月で売上が前年同月比で50%以上減少した法人に最大200万円、フリーランスなど個人事業者には最大100万円を給付するものだ。
裏社会での詐欺の実態に詳しいライターによると、特別定額給付金は「政府が振り込め詐欺などの警戒を促していることと、そもそもの額が小さいため、詐欺師にとってはリスクの割にリターンが小さい」という。
「持続化給付金は、昨年から事業の実態がある企業をもっていないといけないところがネックで、数を打てる詐欺師グループは少ない。この制度に関していえば、例えば前年に儲けた月を丸々1カ月休みにしちゃえばカネが振り込まれるわけだから、詐欺云々というよりも、ある程度売上の大きい企業の経営者のボーナスみたいなものになる」
詐欺師が狙う無利子無担保の6000万円
では、詐欺のグループが最も色めき立っているのは何か。日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」だというのが業界の定説となっているという。この制度は、最近1カ月の売上が、前年または前々年の同じ月と比べて5%以上減少した企業が、無利子・無担保で最大6000万円の融資が受けられるというものだ。
無利子・無担保ということは「融資」ではなく「給付」に限りなく近い質のカネということになる。先のライター氏は「休眠会社を買い取ったり経営者同士で売上高を操作したりすれば、申請後にすぐにカネは手に入る。その後、会社を潰せば取り得になる。一回の金額が大きいからリスクに見合うというわけだ」と解説する。
警察はコロナで動けない
2011年3月11日に発生した東日本大震災の際にも補償金詐欺が相次いだ。詐欺犯の一部で逮捕される例も出ているが、詐欺はそもそも立件が難しい上、新型コロナ特有の事情が警察当局の動きを鈍らせている。警視庁担当記者はこう話す。
「現在、詐欺などの知能犯を担当する2課も含めて警察全体が感染リスクに慎重になっており、普段通りに捜査できない事情があるため、東日本大震災の時よりも証拠集めなどが遅れるのは避けられません。さらに、震災の時もそうでしたが、世論を気にして融資の審査はザルになりがち。こういう状況が重なり、特別貸付に絡む詐欺犯が検挙されるのは2、3年後にポツポツ出てくるようになると予想されます」。
本来、給付金や貸付金は新型コロナによる経済減速で経営が成り立たなくなった企業を税金で救うことが目的のはずだ。ドサクサにつけ込む詐欺犯に我々のカネが渡ってしまうのが避けられないというのは、誠に許しがたい。