円安ウォン高でサムスンの輸出にも打撃 日韓が抱える経済的ジレンマ
というのも、韓国の財閥系グループ企業は、相互に出資を行っている構造があるため、ウォン高騰により製造業や輸出業がダメージを受けると、彼らが影響力持つ広範囲の国内産業も共倒れになり、韓国国民経済全体に致命的なダメージを及ぼしかねないのだ。
今回新たに大統領に就任するセヌリ党のパク・クネ氏は、この経済構造の解消と財閥企業への過度な利益集中の防止、格差の是正を公約に掲げた。いわゆる「経済民主化」だ。
この公約を守れるか否かが、政権の早期レームダック化を防ぐ最大の試金石になる。言い換えれば国民生活の向上が、パク・クネ新政権の最重要課題となっているのだ。
だた、膨張し続けようとする財閥系企業に依存しながら、格差の是正や再分配機能を強化するというのは簡単ではなさそうだ。
というのも、これまでの韓国歴代政権も大企業の成長を促すウォン安政策を主導してきたが、恩恵をこうむったはずの財閥系企業が政府に対してロビー活動や圧力を強め、賃金の引き上げなどを達成できなかった。現在では、物価だけが上昇し格差が広がるという状態が慢性的に続いている。これは、保守や革新問わず、韓国歴代政権が最終的に財閥系企業の軍門に下ってきた証拠と言える。
余談だが、パク・クネ新大統領の父親であるパク・チョンフィ元大統領は、韓国の大企業や財閥に(かなり露骨な)優遇政策を敷くことで、韓国経済を発展させた“功労者”として支持されてきた一面がある。当時を知っている保守党支持者のひとりによると「友人が飢えて死んで行った時代に経済を発展させてくれた。3代先まで支持してもおつりがくる」ほど経済発展に寄与したという認識らしい。トリクルダウン理論(大企業が富むと、国民経済にその恩恵が広まる)の効果を、庶民にもしっかりと実感させることができた大統領というわけだ。
娘のパク・クネ新大統領は、そういう父親を支持してきた層に支えられていると言っても過言ではない。だが逆に言ってしまえば、現在の不安定な経済構造と財閥の市場独占状況を作りだした張本人の娘ともいえる。そのパク・クネ氏が「経済民主化」に向かうというのは、皮肉もしくは運命としか言いようがない。
さて、同じ2世議員である安倍総理をトップに据えた日本政府も、経済再生と国民生活の向上を政権の最重要課題に掲げている。今月12日に行った経団連をはじめとする経済3団体との会合では、アベノミクスへの期待感で業績が向上した企業に賃上げを求めた。国民生活への還元で、政策の有効性を証明しようという狙いがあるのかもしれない、と日本の有力紙は報じている。
ただ、賃金が上がることなく物価だけが上昇することになれば、相対的に国民の生活は圧迫されてしまうだろう。実際に、最近のガソリン高騰などは、すでに日本の庶民生活を締め付けはじめている。
財閥や大企業、そして輸出依存度には差があるものの、日本と韓国が持つ経済的ジレンマに類似点が多いのは単なる偶然だろうか。