つまり「2人目の独裁者」ですね。
どっちの独裁者がエライというのではなく、どっちも同じようにエライと規定しているーーそして、この二次的著作物の解釈のトラブルが、著作権裁判の多くを占めているのです。
●キャンディキャンディ事件にみる、著作権の常識
さて、話をキャンディキャンディに戻します。
いわゆる、「キャンディキャンディ事件」とは、以下のようなものです。
・漫画家のいがらしさんが、原作者の水木さんの許諾を得ることなく、キャンディキャンディの主人公・キャンディのキャラクターでビジネス始めたことに端を発する事件で、このビジネスに対して、原作者の水木さんが、二次的著作物の著作権侵害の訴訟を起こした。
・キャンディキャンディのストーリーが、水木さん原作、いがらしさん作画による著作物であることには、両者とも争いはありません。
・しかし、漫画家のいがらしさんは、キャンディのキャラクターを描いただけの絵(便宜的に、「カット絵」といいます)は、上記の二次的著作物ではないと主張します。カット絵ではストーリーは描かれていないので、水木さんの原作は使っていないことになる、という理由によると考えられます。漫画家のいがらしさんは、上記の「カット絵」については、漫画家のいがらしさんのみに著作権があり、原作者の水木さんには著作権はないと、著作権侵害を否認しました。
・判決は、原作者の水木さんの全面勝訴。裁判所は、「カット絵」も水木さんの二次的著作物であることを認定し、「カット絵」に関しても、水木さんの許諾なくビジネスはできないとして、地裁・高裁・最高裁とパーフェクト勝訴し、2001年10月に最高裁で結審して、判決は確定しました。ちなみに「確定判決」とは、よほどの理由(新しい証拠が見つかった等)がなければ、ひっくり返らず、他の裁判もこの判断に従うことになるという、事実上の法律に相当する絶対的な判決を言います)
判決理由【註1】の概要は、以下のとおりです(筆者要約)。
(1)キャンディキャンディは、水木さんの原作の二次的著作物と認める。従って、二次的著作物にも、原作者の権利が及ぶとされている著作権法第28条が適用される。
(2)著作権法28条に照らせば、漫画家のいがらしさんが持つ権利については、すべて同様に原作者の水木さんも持つと解釈される(そもそも、キャンディキャンディに関して、漫画家いがらしさん“だけ”が持っている権利は存在しない)。
(3)なぜ著作権法第28条が、そのように規定しているかというと、このようなケースを個別判断していたら権利関係が著しく不安定になるし(=訴訟をいくつやっても足りない)、そもそも原作に依存しない二次的著作物というものは観念できない(=そのような著作物はない)。
というものでした、さて、この判決について、みなさんはどのように思われるでしょうか?
(文=江端智一)
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『“違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も…』
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【註1】控訴審判決(平成11年(ネ)1602号)