カジノ管理委員会、税金で30万円超の高級チェア10台購入…「運営上必要なため」と回答
前回の記事で伝えた通り、2020年4月23日、筆者ら4人のフリーランスはカジノ管理委員会に対し、以下の申し入れを行った。
「カジノ管理委員会が記者会見などの取材機会を設定したり、文書やメール、口頭で情報を提供したりする場合、フリーランスも記者クラブ加盟社の記者と同等に取り扱うこと」
5月11日、カジノ管理委員会から以下の回答があった。
「記者会見の手続きについては、そのつど検討したい」
申入人の1人で、「ビジネスジャーナル」で「IRカジノ解禁の真実」を連載している藤野光太郎氏は、「お互い忙しいのに、『そのつど検討したい』んですか」と苦笑する。
「こんなものは、記者会見参加を希望するフリーランスのメールアドレスを登録しておき、会見を開くことが決まったら、通知を一斉送信すれば済む話。たとえ、会見に参加できるフリーランスを活動実績などで選別するとしても、資格者のメールアドレスを登録しておけばいい。カジノ管理委員会が言っているのは、『会見ごとに、フリーランスを参加させるかどうか、参加させるとしたら誰を参加させて誰を排除するか、検討します』ということ。シャンシャン会見が目的でしょう」
発足早々、高級チェアを揃える
同じく申入人の1人で、国政選挙や地方選挙を通じてIR政策を取材している畠山理仁氏は、「カジノ管理委員会はふざけていますね。公的機関の記者会見は国民の知る権利にこたえるためのもの。フリーランスも一定の国民の知る権利を代行しています」と憤る。
そして、「そもそも、カジノ管理委員会には税金で運営されているという自覚が足りないのではないか」と指摘する。
「1月7日、カジノ管理委員会が発足し、10日後、徳永崇事務局長(警察庁キャリア)名で入札公告が出されました。それを見ると、ハイバックチェア(オカムラ製L433JH-P611)1台とローバックチェア(同L433JL-P611)9台が一般競争入札に付されています。どちらも定価で税込み35万円以上もする高級チェアです。どうして、このようなものが必要なのか。私が記者会見に参加できたら、ぜひ質問したい」
しかし、カジノ管理委員会の記者会見は不定期で、次回の開催は未定だ。しかも、畠山氏が参加できる保証はない。そこで、カジノ管理委員会に対し、上記の質問を伝えて回答を求めた。
2日後、以下の回答が返ってきた。
「カジノ管理委員会の運営上必要なため、購入したものです」
記者会見なら、こんな回答は許されないだろう。即座に「具体的な必要性を説明してほしい」と突っ込まれる。カジノ管理委員会が記者会見にフリーランスを参加させたくない理由がよくわかる回答だった。
入札結果の公表期限も守らず
高級チェアの購入には、さらに問題がある。入札結果が公表されていないのだ。
「公共調達の適正化について」(財務大臣通知)では、「国の支出の原因となる契約を締結したときは、その日の翌日から起算して72日以内に、次に掲げる事項を公表しなければならない」として、「契約を締結した日」「契約の相手方の商号又は名称及び住所」「契約金額」などを挙げている。
カジノ管理委員会のホームページを見ると、入札公告はいくつか掲載されているが、入札結果はひとつも掲載されていない。カジノ管理委員会に問い合わせると、「掲載する準備をしています」とのこと。このルーズさでカジノ事業の免許を与えるというのだから、「世界最高水準のカジノ規制」(安倍晋三首相)など望むべくもない。
カジノ管理委員会に対し、高級チェアの入札結果について明らかにするよう求めたところ、以下の事項が判明した。
【契約を締結した日】
2月3日
【契約の相手方の商号又は名称及び住所】
株式会社秋山商会
東京都中央区東日本橋2-13-5
【契約金額】
税込み298万1000円
冒頭の申し入れを行ったフリーランスの1人で、『ギャンブル大国ニッポン』(岩波書店)の著者の古川美穂氏は、「カジノ管理委員会の予算は、2019年度が約25億円、2020年度が約38億円。その使途について明確な説明をして国民の理解を得るのは当然のことです。2月の時事通信の世論調査で、IRに賛成が22.8%、反対が62.4%という数字を見れば、なおさらでしょう。ところが、記者会見の開放にしても、入札結果の公表にしても、カジノ管理委員会は、あえて国民の理解を得られないことをしています」と話す。
安倍首相は「カジノ管理委員会の廉潔性の確保」を強調してきた。しかし、取材を進めれば進めるほど、伏魔殿の様相が感じられる。
(文=寺澤有/ジャーナリスト)