9月8日、警視庁組織犯罪対策5課は、自宅で大麻を所持したとして大麻取締法違反(所持)の疑いで俳優の伊勢谷友介を現行犯逮捕した。
東京藝術大学出身で、ファッションデザイナーの故・山本寛斎の異母弟でもあり、広末涼子や長澤まさみ、森星らとの熱愛報道でも知られる伊勢谷だが、報道などによると、以前から大麻使用やDVの噂は絶えなかったという。
すべてに恵まれた輝かしい人生は、どこで狂ったのか。『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社)の著者で、覚醒剤捜査のオモテとウラを知り尽くしている元北海道警察警部の稲葉圭昭氏に聞いた。
大麻を密売していた可能性は?
――報道によると、認否については「弁護士さんが来てからお話ししたいと思います」と話しているそうです。
稲葉圭昭氏(以下、稲葉) 報道だけではわからない部分も多いけど、今回は伊勢谷さん本人の関係者からの情報提供が元のようで、5課はかなり長い間、内偵をしていて、事前にゴミまで漁っている。そうじゃないと、家に踏み込んだときに都合よくブツがあるわけがない。
――そうですね。たとえば、2016年に5課が清原和博さんの住むマンションに踏み込んだときは、手に注射器と吸引用のストローを持ったままだったそうです。
稲葉 すごいタイミングだよね、警察官の鑑だよ(笑)。なかなかそうはできない。かなり内偵しても、難しいと思う。
――伊勢谷さんの場合は、捜査員が「捜索差押許可状」を見せて中に入ったら、リビングのテーブルの引き出しに4つの袋に合計20グラムの大麻と、テーブルに吸引具のような巻紙があったと報道されています。大麻はとても軽いので、20グラムは相当な量ですね。約12万円、40回分の使用量だそうです。
稲葉 20グラムだと、自分が使うための所持にしては多いけど、密売かどうかを判断するのは難しい。俺が現役だった頃に、検察官から「50グラム以上だと密売を疑う」と聞いたことがある。今は違うかもしれないけどね。また、営利目的だと判断するには、「売るつもりで持っていた」という本人の供述があるか、客の証言などの裏付けが必要になる。
――密売はやってないとすると、常習ということですか?
稲葉 その可能性は十分にあるね。
――なるほど。それは、これからの捜査次第ですね。それにしても、内偵を重ねてきて、なぜ「今」なのでしょうか? 自民党の総裁選挙や河井克行元法相夫妻の公判から注意をそらすつもり、との説もあります。
稲葉 それはないと思う(笑)。まぁ、確かに厚労省と都道府県の「麻薬・覚せい剤乱用防止運動」(警察庁は協賛)は10月から11月だから、ちょっと早いしね。伊勢谷さんが警察学校の教官役をしていたテレビドラマが終わったから……という説もあるから、そっちかもね。さすがに、いくら「役」でも教官がパク(逮捕)られたらシャレにならないよね。
――なるほど、そうかもしれません。今回は5課が動きましたが、芸能人の薬物逮捕は5課が特に多い印象です。沢尻エリカさんやASKAさんも5課が逮捕しています。マトリ(厚生労働省地方厚生局麻薬取締部)だと、ピエール瀧さん、元KAT-TUNの田口淳之介さんなどですね。
稲葉 うん、5課とマトリは競い合って芸能人を逮捕したがるから。芸能人を逮捕すると“やってる感”が出るからね。5課とマトリの大きな違いは、5課は銃器捜査もやっているところ。
伊勢谷さんの場合はタレコミ(情報提供)があったようだけど、細かい部分はこれからわかるんだろうね。それにしても、関係者にタレコミされるなんて、相当恨みを買っているのかもしれないね。恨みは買いたくないね(笑)。今後は、薬物に手を出してしまった自分を認めて向き合って、いずれは社会復帰もしてほしい。
俺たちがやってきたのは、密売人をエス(スパイ/spyの頭文字)にして、どんな奴が買いに来ているかの情報を取って捜査していく方法だった。それで、エスの密売は見逃してやるわけ。もちろん、今もみんなやってる。薬物や拳銃の捜査は水面下でやるから、不正も起きやすい。詳しくは、俺がモデルの映画『日本で一番悪い奴ら』を見てみてよ(笑)。
●『日本で一番悪い奴ら』
正義感に燃える刑事が点数を稼ぐべく、裏社会に飛び込んでゆく。次第に悪徳捜査はエスカレートし…。「日本警察史上最大の不祥事とされる衝撃の実話に基づく作品」としてネットフリックスで公開中。