――その差を見て、トランプ氏は脱退したいと表明したのですね。
西川 「脱退したい」と言っていますが、大統領令というのは正確には「メモランダム」、つまり「覚書」であり、上司から部下への指示ということです。しかし、最終的な決定権は議会が持っています。
――各国がTPPを様子見しているなかで、日本が昨年12月9日にTPPの国会承認を行った背景を教えてください。
西川 それは、TPP発効の牽引力となるために範を示そうとしたのです。TPPは日本のために良い交渉ができたので、TPPが発効するよう率先して牽引しようと、日本は揺るぎない姿勢を示したのです。
――より有利な条件をと、2国間交渉を掲げてアメリカは動いていますが、最終的にはアメリカもTPPを承認するのでしょうか。
西川 TPPは当然アメリカにも利がある条約でもありますし、7年後に「再交渉」とも謳っています。この「再交渉」では、アメリカも主張するでしょうが、当然日本も主張しますから、これは2国間仲良くしたほうがいいと思います。そういう意味でも、トランプ大統領の(TPP離脱という)発言はもちろんいいのですが、共和党というのは元々自由貿易推進が多数派なのですから、もう一度テーブルに着いていただきたいですね。
――それは、アメリカとTPPの再交渉を行うということでしょうか。
西川 再交渉ではありません。(TPPは)今の形で決着してもらいます。アメリカは、その後で次の手を考えればいいと思うのです。
再交渉ではなく、現在の形でTPPを発効させるという西川氏。トランプ政権による予測のつかない行動に各国が振り回されているなか、西川氏は「TPPを成立させる」ために、次の一手を打っているという。今後、TPPはどういう決着をみるのだろうか。
(文=編集部)