「『会社に残りたい』は寝言」富士ゼロ”脅迫”解雇事件の闇
その後、Aさんは、「退職の意思表示は、脅迫による意思表示であるから取り消す」と訴え、富士ゼロを相手取り、「労働契約上の権利を有する地位確認」と、未払い賃金などを請求する訴訟を東京地裁に起こした。
11年1月19日、一審判決は、原告の全面勝訴。富士ゼロは控訴し、二審では、和解交渉が続いた。ここまでの経緯の詳細は、ネットサイト・マイニュースジャパンの記事「富士ゼロ 社員を恐喝して自主退職に追い込む犯罪的手口の全容」を見てほしい。
そしてここから先は、当サイト独占取材による最新情報である。12月1日、二審の裁判で、ついに和解が成立した。
その内容は、「Aさんが退職した時点の09年5月15日で、合意解約したことを相互に確認する」「富士ゼロはAさんに対し、本件解決金として2500万円を支払う」「富士ゼロはAさんの退職金受領に伴う手続きについて、Aさんに協力する」など。
つまり、職場復帰はしない代わりに、解決金2500万円プラス退職金をAさんに渡すことで決着したわけである。
なお、D氏やAさんの事件は、氷山の一角なのかもしれない。というのも、実は11年、筆者のもとに富士ゼロの元社員X氏(年齢、性別は伏せる)から情報提供があった。X氏は電話で「私もAさんと同じように解雇された」と言い、「一度直接会って話したい」というので、筆者は指定された場所に行き、X氏に会ってきた。
X氏の話によると、X氏は、D氏に対して「障害者は用済み」と罵倒した人事部T氏に、尋問を受け、密室で面罵されて、解雇に追いやられた、という。X氏は筆者に質問をしたり自己紹介をしたりで、30分ほど話して去って行った。後日、X氏から「詳しい内容については、資料を持参してお話ししたい。私が話すことで世の中のためになるなら、是非、記事に載せてください。今、出張中なので改めて、週末連絡します」という趣旨のメールが来た。しかし、その後、連絡しても応答がない状態が続いている。
X氏は臆するものがあったのもかしれない。富士ゼロの不当な仕打ちで解雇された社員は、まだまだいそうである。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)