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大量殺人犯の「共犯者」、無実なのに死刑判決か…国は新証拠を黙殺し再審請求を棄却

文=深笛義也/ライター
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大量殺人犯の「共犯者」、無実なのに死刑判決か…国は新証拠を黙殺し再審請求を棄却の画像1最高裁判所庁舎(「Wikipedia」より/Wiiii)

 24年前の1993年に埼玉愛犬家殺人事件を起こした関根元死刑囚(75)が、多臓器不全により3月27日に収容先の東京拘置所で死亡した。心臓に水が溜まる「心タンポナーデ」で、治療を受けていたという。関根は、日本犯罪史上最大級の殺人犯であると筆者は見ている。

「ボディを透明にする」

 関根は、自身の犯行様態をそう表現した。肉はサイコロステーキほどの大きさに切り刻み、骨は高温で粉になるまで焼き、もっとも雄弁な証拠である遺体をほとんど消滅させてしまうのだ。

 遺体がないために捜査は難航し、関根が逮捕されたのは事件から1年以上たった95年である。一方、84年にも関根の周囲に3名の行方不明者が出ていた。関根による殺害であるとする共犯者の詳細な供述があったが、埼玉県警による大規模な捜査によっても物証は出てこず、立件はされていない。

 関根は日本では稀に見るシリアルキラーである。「犯行と犯行の間に感情的な冷却期間が存在する」のがシリアルキラーであると、FBI心理分析官だったロバート・K・レスラーは『快楽殺人の心理』(講談社)で規定している。

 シリアルキラーについて、海外では数多くの記録や手記が存在するが、彼らはあたかも作業でも行うように殺人をやってのけ、社会生活を送り、家庭生活を営んでいる。シリアルキラーは、自分の犯行を完全にコントロールすることができ、決して逮捕されないという確信を抱いており、実際に捕まらないことも多い、ともレスラーは語っている。

 日本で見られる大量殺人者はほとんど、ひとつの場所で多数の人間を殺害するマスマーダラーか、1日以上から1年程度の短い期間内に複数の場所で殺人を行うスプリーキラーである。彼らには、感情的な冷却期間は存在しない。

 関根を裁く法廷でも、彼が大量殺人犯であることを指摘する声は上がったが、まともに検証されることはなかった。メディアの姿勢も同様である。今回の報道のいくつかで、関根の元妻の風間博子との共謀で犯行が行われたと記されている。確定判決でも、そのように書かれている。

 風間は逮捕以来、殺害への関与を一貫して否定している。関根に犯行現場に呼び出され、その場の恐怖から死体損壊遺棄を行ってしまったことは認めている。確かに、ごく普通の殺人犯なら、共謀していない人物を現場に呼んだりはしない。だが、関根はシリアルキラーだ。

 脅されて死体損壊遺棄だけを手伝わされたという、共犯者Yの取り調べ時の供述によって、風間は殺人の罪で起訴された。だが、法廷でYは「博子さんは無実だと思います」「人も殺してないのに、なんで死刑判決出んの?」などと証言し、取り調べ時の供述を覆した。

 風間を殺人犯だとする証拠は、検察や裁判所も「支離滅裂で信用できない」とした関根の供述しかなくなっていた。だが、検察や裁判所はYが法廷で否定した取り調べ時の供述が事実だとした。

警察官の職務怠慢を理由に再審請求を棄却

 関根と風間への死刑判決は2009年に最高裁判所で確定したが、その後、風間は再審請求を行っている。

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