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経営危機のJR北海道、線路で衝撃の光景…橋梁がない鉄橋、線路が宙に浮く路盤流出

文=山田稔/ジャーナリスト
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波打ち際の路盤が流出して線路が浮いている大狩部

経営危機のJR北海道、線路で衝撃の光景…橋梁がない鉄橋、線路が宙に浮く路盤流出の画像3高波にえぐられた大狩部駅付近

 慶能舞川を後にして235号を進む。15分ほどで大狩部(おおかりべ)駅に着く。10年ほど前、日高本線を全線乗って襟裳岬まで行ったことがあるが、そのとき、「この駅はホームから釣りができそうなくらいだなあ」と驚いた記憶が蘇ってきた。

 無人の駅は、ブロックを積み重ねたシェルターみたいな建物だ。ブロック塀に列車代行バスの時刻表とJR普通運賃表が貼られている。苫小牧まで1450円、札幌まで2810円、様似までは1640円だ。駅開業は1958年なので、来年で60年になる。いろんなドラマがあったことだろう。

 ホームに出ると、本当に海が近い。波除の塀をはさんで波打ち際まで10メートルもないだろう。だが、厚賀方面の線路を見て唖然とした。岸にほど近いところを走る線路が宙に浮いているのだ。線路下の路盤が流出した現場である。強風で白波が押し寄せてくる。これでは高波が来たらひとたまりもない。海が穏やかな日は、車窓から間近に太平洋を眺められ、なんと素晴らしい光景かと思ったが、ひとたび大自然が牙をむいたら太刀打ちできない。衝撃的な光景に言葉を失い、しばし佇む。

 大狩部の次は、この日最後の目的地、静内駅に向かう。駅に着くと様似に向かう代行バスが停車していた。やがて鵡川からのバスが着き、乗客はここで接続するバスに乗り換える。様似行きのバスに乗っていたのは女性客1人だけだった。

経営危機のJR北海道、線路で衝撃の光景…橋梁がない鉄橋、線路が宙に浮く路盤流出の画像4静内駅前の代行バス

 静内は旧三石町と合併して、新ひだか町となっている。「優駿・競走馬に会えるまち」で知られ、春はエゾヤマザクラが美しい。日高地方の中心地であり、高校生や観光客など、かつては乗降客も多く賑わっていた駅だ。この日は観光オフシーズンの平日とあり、駅構内は数人の乗客がいるばかり。そば店も土産物屋も閑散としていた。改札からホームを眺めるが、列車の走らないホームには寂しさが漂う。

 今回、鵡川、大狩部、静内の3駅と慶能舞川橋梁跡を見て回った。今のJR北海道の経営力では、正直なところ全面復旧への道は厳しい。とはいえ、人口減が続く沿線自治体に相応の負担を強いるのも無理な話だ。ここは道や国が動かなければ、抜本的な対策は打てないだろう。もともと、旧国鉄の分割民営化に無理があったのだから、JR再編も視野に検討すべきではないか。日高本線を廃線にして、バス路線やDMVに転換したところで、それだけでは地域活性化という視点から見れば本当の問題解決にはならないと思う。

 今回は日高本線を取り上げたが、同じ構図は道内各地に存在する。対処療法ではなく、北海道の恵まれた自然環境を活用した地域活性化策を真剣に考えていかないと希望が見えてこない。

 外国人観光客が急増している現状を踏まえ、新たなビジョン作成に取り組んでほしいものだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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