「桐谷美玲がリケジョ!?」と、いろいろな意味で話題となっているドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)。大久保ヒロミの同名漫画を原作に、女子力の低いイケてない理系女子、いわゆる“リケジョ”が美を追求して奮闘する姿を描くラブコメディだ。
しかし、このドラマに対しては、本物のリケジョたちからブーイングも出ているという。「リケジョ=女子力がない」は単なる偏見で、そんなことはないというのだ。
では、実際のリケジョの日常はどのようなものなのか。研究職などに就くリケジョに聞き取り調査を行い、その実態を探った。
「ズボラ」と「素敵」の差が激しいリケジョ
ドラマは、桐谷演じる城之内純、水川あさみ演じる前田満子、ブルゾンちえみ演じる佐藤聖良のイケてないリケジョ3人が、東京・丸の内にオフィスのある化粧品メーカーの研究所に転属になったところから、本格的に始まる。
以前の職場では毎日すっぴんで女子力ゼロ、“女子モドキ”だった3人だが、丸の内の同僚は女子力の高い素敵女子ばかり。その華やかさに圧倒された3人は、就業後に流行のメイクやファッションについて研究を重ね、美を追求していく……という内容だ。
「世界で最も美しい顔100人」に選出された桐谷が「女子モドキ?」というツッコミはさておき、リケジョに対する世間一般のイメージが「すっぴん」「おしゃれに縁遠い」といったものであることは事実だろう。
しかし、本物のリケジョたちに聞いてみると、「リケジョに対する先入観には、いつも違和感を抱きます。理系職の知り合いは、普通にオシャレに興味を持っていますよ」(26歳/電機メーカー/研究職)といった声が続出した。
「基本的に内勤ですし、実験中は動くことも多いので、丸の内のOLに比べればラフな格好をしているかもしれません。ただ、私のまわりも服装に気を使っていますし、文系のキャリア志向の人とそんなに変わらないと思います!」と憤慨するのは、「38歳/製薬会社/研究開発」のリケジョだ。
「服装やお化粧に関しても、『自分の顔に映えるのは何色かな?』程度のことは考えます。リケジョだって、ほかの女子と同じです!」(同)
ただし、ファッションやメイクに関してはリケジョならではの制約が存在するのも確か。「31歳/繊維メーカー/技術職」のリケジョは、「品質管理という仕事柄、勤務中は化粧の類いは禁止です。でも、休日は普通のOLと同じように、気にせず好きな格好をしています」という。「リケジョ=すっぴん」というイメージには、こうした事情もありそうだ。
その一方、リケジョは個々の女子力の差が激しいという意見もある。
「平均的な値からすると、世間的なリケジョのイメージは的を射ている部分もあります。でも、一人ひとりを見た限りでは、リケジョは『ズボラ女子』と『素敵女子』の差が極端という印象です」と話すのは、「29歳/半導体メーカー/SE」のリケジョだ。
「『素敵女子』の場合、高級コスメをチェックして、頻繁にエステに行くなど、自分磨きに給料のほとんどをつぎ込む人もいます。一方、すっぴんで毛玉のついたカーディガンを着ていても平気だったりと、完全に無頓着な女性がいるのも事実です。ファッション誌で流行をチェックし、月1で美容院に行くくらいの絶妙な意識を持っている人は少ないかもしれません」(同)
意外とモテモテ?リケジョの恋愛事情
ドラマは、リケジョ3人による美の追求と同時に、桐谷演じる純と成田凌演じるイケメン美容師・榊圭一の恋の行方も見どころのひとつ。
純はイケメンを見るだけで緊張してしまうほどの奥手で、「一生独身かもしれない」とあきらめている女子という設定だが、これもリケジョの「女子としてイケてないイメージ」を過剰にフューチャーしたものだろう。
それだけに、この部分に関しても、本物のリケジョたちは大ブーイング。「女性誌に書いてあるような恋愛とは違うかもしれませんが、男性が多い環境なので、むしろリケジョは比較的恋愛はしていると思います」(27歳/研究開発/自動車メーカー)と猛反論する。
実際、リケジョの恋愛事情について多かったのは、次のような声だ。
「リケジョのなかには、『化粧や服装を意識したら、もっとかわいくなるのに』という女性もたくさんいます。でも、私たちの職場環境では、そういうダサい子でもモテます。むしろ、そういうイケてない子のほうがモテます」(33歳/製薬会社/CRO)
「理系出身の研究職の男性には、どちらかというとオタク系の人が多い」――これも理系に対する偏見のひとつではあるのだが、文系出身の社交的な営業職とは対照的に、華やかな女性に苦手意識を持つ男性がたくさんいるという。
「美人で服装や化粧にお金をかける女性に対して、苦手意識を持っている男性は多いです。だから、ルックスは十人並みで、女性から見たらそんなにオシャレじゃなくても、黒髪ロングでフワッとしたスカートをはいた女の子らしいリケジョはすごくモテます! これは間違いありません」(28歳/電機メーカー/SE)
リケジョたちが共感した合コンのシーンとは?
本物のリケジョたちから反論されまくりの『人は見た目が100パーセント』だが、なかには彼女たちが「あるある!」と膝を打つ回もあったという。それが、第3話(4月27日放送)で純が生涯初の合コンに参加したシーンだ。
このシーンでは、合コン参加者のひとりである美容師の榊に仕事内容を聞かれた純が研究について語ったものの、理解されずに微妙な空気が流れてしまう。実は、これは「リケジョあるある」なのだという。
「『どんな仕事しているの?』と聞かれて研究内容を話しても、だいたい引かれてしまって話が広がらない」と話すのは「31歳/製薬会社/研究助手」のリケジョである。
この「リケジョあるある」には、ほかにもバリエーションが存在する。
「職場の同僚同士とのクセで、理系ネタで笑いを取りにいくと、話が全然通じなくて、説明している間に空気が重くなる」(28歳/医療メーカー/研究開発)
「恋愛ではないですが、いわゆる“ギャップ萌え”について『微分係数が高いってことだよね?』と聞き返したら、文系男子の友人にドン引きされました。ちなみに、同席していた理系男子は大喜びしていました」(38歳/医療メーカー/研究開発)
ちなみに、リケジョを前にするとひるむ文系男子は多いが、一方のリケジョにとっても文系男子は苦手な存在なのだという。
「27歳/製薬会社/研究開発」のリケジョは、「文系の男性と付き合ったことがないのでわかりませんが、なぜか文系の方には苦手意識があります。理系の方が相手だから許されたんだろうなと思うことは、いろんな恋人イベントより研究を優先させてもらえたことでしょうか」と語る。
『人は見た目が100パーセント』の視聴率は、直近の第4話(5月4日放送)が5.5%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)で初回から右肩下がりだ。打ち切りの噂まで出ているが、もしかすると、この低視聴率の最大の原因はリケジョたちから共感を得られていないことかもしれない。
(文=谷口京子/清談社)