経済制裁解除ならロシアが北朝鮮を“捨てる”?
前回記事で、中村氏は「北朝鮮のミサイル発射はロシアの手によるもの」という見方を示していた。では、なぜロシアは北朝鮮からミサイルを撃っているのだろうか?
「経済制裁を解除してもらうためです。現在、ロシアは銀行や天然資源関連企業など約350社がブラックリストに載っていて、欧米や日本との取引が禁止されています。たとえば、日本の商社がブラックリストに載っているロシア企業と取引をしてアメリカに見つかれば、その商社はアメリカとの取引ができなくなります。そういった事情もあり、この経済制裁はロシアにとって大きな痛手です。
今、ロシア人の51.3%が『自分は貧困』だと思っているというデータがあります。ロシアでは、来年の3月に大統領選挙が行われます。もちろん、プーチンの再選がほぼ確実ですが、問題は投票率です。
『最後まで何が起きるかわからないのが選挙なのに、なんでロシアだけはプーチンが再選するって決まっているんだ。こんなに貧困なのに』という声が30代以下の若者層に増えてきており、彼らはツイッターでつながっています。そうした不満分子をなだめるためにも、経済の状態を上向きにしないといけない。そのためには制裁解除が必須であり、最初ロシアはシリアを利用しようとしました。しかし、一向に解除されない。
そこで、今度は北朝鮮を使おうということでミサイルを撃って危険をあおっているわけです。今、世界でどこが北朝鮮と対話できるかといえば、ロシアしかありません。プーチンとしては、『その役割を引き受ける代わりに経済制裁を解いてくれよ』というわけです。貧しい国や無能な指導者の国を見つけて『将来、外交のカードに使えるな』と思えば、そのための布石を打っておく。以前から、それがプーチンのやり方です」(同)
では、もし実際にロシアの経済制裁が解除されたら、その後はどうなるのだろうか。
「ロシアは北朝鮮を捨てるでしょう。核だけは引き揚げさせて、後は野となれ山となれ。不凍港の羅津港だけはほしいと思いますが……。しかし、経済制裁を解除するということは、ロシアがクリミアを強制的に併合したことを認めるということですから、欧米は簡単には解除しません。
仮にロシアのクリミア併合を認めてしまえば、『あのやり方がOKなんですね』ということで暴れ出しそうな国がたくさんあります。中国、フィリピン、トルコ、イラン……。特にドイツのアンゲラ・メルケル首相は原理主義者で経済制裁解除には強硬に反対しているので、現実的にはかなり難しいでしょう」(同)