「お前が逃げているものは、逃げれば逃げるほど、追ってくるものだ」
追ってきた警察の“お縄”になる自身の顛末を予言していたのだろうか。女性に睡眠薬を飲ませて乱暴したとして準強制性交容疑で逮捕された東京都新宿区左門町、広告配信大手リクルートコミュニケーションズ社員丸田憲司朗容疑者(30)。丸田容疑者のFacebook(FB)のアカウントの職歴欄には、上記のような“格言”が記されていた。
読売新聞インターネット版は3日、記事『【独自】「OB訪問アプリ」悪用、就活女性に乱暴容疑で男再逮捕へ』を配信した。同記事によると、「丸田容疑者は7月下旬、港区赤坂のホテルで、就職活動中の学生と社会人をつなぐ『OB訪問アプリ』を通じて知り合った20歳代の私立大3年の女子学生に睡眠作用のある薬を混ぜた酒を飲ませて抵抗できない状態にし、乱暴した疑い」という。
学生の就職活動用の資料作成を手伝うなどとそそのかし、広告業界への就職を希望していた女性を毒牙にかけたようだ。全国紙社会部記者は話す。
「丸田容疑者は11月12日に、別の30代女性への準強制性交罪の容疑で警視庁に逮捕され、今月2日に起訴されています。睡眠薬をまぜた白ワインを飲ませて乱暴するという今回と同様の手口でした。しかも、容疑者のスマートフォンからは、昏睡状態とみられる女性を映した動画が数十人分見つかったそうで、警視庁は被害者の特定を進めていたのです。今回の件はあくまで氷山の一角です」
警視庁の捜査関係者は次のように話す。
「現在、警視庁ではサイバーパトロールを中心にSNSを使った未成年者や立場の弱い学生などへの性犯罪の摘発に全力を挙げています。比較的にやり取りが可視化しやすく、違法性の証拠が残りやすいTwitterや男女のマッチングアプリなどで、ここのところ一定の成果をあげていますが、こうした『OB訪問』アプリのような『出会い系』ではない閉じたSNSは摘発が難しいのが現状です。丸田容疑者の件は余罪も含めて、全力で捜査していきます」
丸田容疑者が使用していた『OBトーク』
捜査関係者によると、丸田容疑者が今回の犯行で実際に使用していたのは『OBトーク』というアプリだという。実際に使用してみたところ、登録は学生、社会人で選ぶことができた。登録後は、自身が就職したい業界の社会人を探すことになるのだが、検索条件には「会える場所」「業界」「職種」「大学」「卒業予定」「性別」などがあり、「業界」「職種」など一番重要な部分を検索するのには利用料が必要になる仕組みだった。
丸田容疑者の個人ページには自身の学歴や職歴、学生時代にバーテンダーをしていた経歴とともに、さわやかな顔写真もあった。「特別相談プラン」という項目がピックアップされ、次のように学生に対して呼び掛けていた。
「一期一会ですが、就職後は横の繋がりとして社会人友達となれればいいなと思います!就活は大変ですが、やりきれれば圧倒的な成長と達成感のある思い出となるので、一緒に楽しみながら駆け抜けていきましょう!」
誕生日に女子学生を面接?
ステータスを見ると返信率は100%、返信時間は1255時間と相当このアプリを使い込んでいるのがわかる。一方でやり取りの承認率は約60%。同容疑者とのやり取りで高評価を押しているのはほぼ女性だ。容疑者と面談をし、高評価ボタンを押した女性の一人は次のようにメッセージを残していた。
「誕生日の日にお話の機会作ってくださりありがとうございました! とても話しやすかったです!」
リクルートコミュニケーションズの関係者女性は次のように話す。
「誕生日に合わせて面接とか下心がダダ洩れでただただ気持ちが悪いです。OB訪問に来た学生に自分の誕生日いつかなんて、いちいち話をしたりしませんよね。直接面識はありませんが、彼の逮捕でクライアントから嫌味を言われました。もともとうちは学生さんなど若年層をターゲットとするサービスが多いので今回の件は社の信用にかかわる問題です。
彼を知る社員によると、仕事では『やり手』というわけではなかったそうですが……。FBやOBトークを見る限り、めちゃくちゃやり手でモテそうな雰囲気を醸し出していますね。ただ、本当に魅力的な人間は睡眠薬を使って女性を、ましてや学生を乱暴したりしません。そもそもOB訪問アプリに1225時間も費やしていたって、ちゃんと仕事していたのかと怒りを覚えます」
就職活動中の学生はどうしても「弱い立場」になりがちで、そんな彼ら彼女らを食い物にしようとする悪質な社会人は枚挙にいとまがない。学生たちの目線で安全な就職活動の在り方を模索する必要があるのかもしれない。
(文=編集部)