トランプ米大統領によって5月に解任されたジェームズ・コミーFBI前長官は8日、米上院情報特別委員会の公聴会に出席。ロシアとの深い関係が疑われていたフリン前大統領補佐官への捜査について「フリンは良いヤツだ。この件は放っておいてほしい」とトランプから2月に求められたと、自身のメモに基づいて証言、司法妨害があったことを示唆した。
在職中の大統領が辞任に追い込まれたニクソン大統領のウォーターゲート事件になぞらえられて、ロシアゲートと呼ばれているが、どのような背景でこの問題が起こり、今後どのようになっていくのだろうか。
前回に引き続き、元外務省情報局長で『戦後史の正体』(創元社)をはじめ数多くの著作のある評論家、孫崎享氏に話を聞いた。
今後ロシアゲートはどのような展開をたどるのだろうか。
「トランプに反対しているエスタブリッシュメントの人たちかちは、トランプを早く辞めさせて、副大統領のマイク・ペンスに大統領になってほしいと思っています。そうなれば、彼らは政権に入れるからです。だから、トランプ攻撃というのは政権が続く限りずっと続いていくでしょう。
ただ米議会で弾劾ができるかというと、下院は過半数の賛成でいいので可決される可能性はありますが、上院では3分の2以上の同意がなければ罷免は成立しないので、これはなかなか難しい。世論調査をみていると、トランプの支持率は40%を上下していて、ホワイトプアを中心にしたコアなトランプ支持者は離れていないことがわかります。トランプは民衆の支持があって当選したので、これが大幅に崩れないところでトランプ攻撃をやれば、共和党の議員は次の選挙で負ける可能性も高い。トランプ支持者が離れていって、支持率が30%を切るような事態にでもならないと、なかなか動けないでしょう」(孫崎氏、以下同)
エスタブリッシュメントの人々が声を上げているなか、共和党はトランプ大統領のままでいいのだろうか。
「ひとつの着目点としては、トランプは政策的には保守本流の望むことをやっているということです。安全保障や税制、医療保険もほとんど丸投げのようなかたちで、共和党に都合のいいものをやっている。たとえばトランプは以前、イラク戦争は間違っていたと言っていたが、彼はその考えを貫くつもりはありません。彼が国防長官に選んだジェームズ・マティスにしても、安全保障の補佐官にしても、イラク戦争、アフガニスタン戦争を実施した人たちです。安全保障政策にトランプは口出しするつもりはない、ということです。共和党の人たちに、トランプの政策に不満があるわけではない。ということになると、なぜ弾劾しなきゃいけないかということになります」