政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本に落下する可能性がある場合、どのように行動すべきかを周知するテレビCMを23日から放送し始めた。
CMは2週間にわたって全国で放送される。ちなみに、同じ内容の動画はインターネットでも公開されている(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg15555.html)。
CMは、「弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合、『Jアラート』(全国瞬時警報システム)を通じて屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れます」とし、次のように行動するよう推奨している。
・屋外にいる場合、頑丈な建物や地下に避難してください。
・近くに建物がない場合、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守ってください。
・屋内にいる場合、窓から離れるか、窓のない部屋に移動してください。
少しでも被害を減らすための対策なのだろうが、「物陰に身を隠す」「地面に伏せる」という行動は、どれほど効果があるのか疑問視する向きも多い。「政府広報オンライン」には、さらに詳細な説明もある。
http://dwl.gov-online.go.jp/video/cao/dl/public_html/gov/kokuminhogo/index.html
http://dwl.gov-online.go.jp/video/cao/dl/public_html/gov/kokuminhogo/qa/index.html
北朝鮮の核・ミサイルへの国民の危機意識を高めることが狙いとしているが、一方で国民の不安を煽り、政府への求心力を高めようとしているのではないかとの指摘もある。
韓国では、「北朝鮮は戦争を望んでおらず、絶対にミサイルを撃ち込んではこない。日本の反応は過剰」と冷ややかな見方が多い。
実際には、どれほど危機が迫った状況なのだろうか。国際ジャーナリストの大野和基氏は、ミサイルが飛来する可能性はゼロではないと警鐘を鳴らす。
「北朝鮮がミサイル発射をやめることはしばらくないと思います。というのも、やめることで今までの発射が単なる『けん制』としか解釈されなくなるからです。日本を狙わなくても、間違って日本に届く可能性はゼロではないので、常に注意しておく必要はあります。
しかし、Jアラートが出た場合に備えて、自分で逃げるルートを決めておかないといけません。発射してから日本に届くまでに数分かかりますが、考えている時間はありません。家にいる場合はどうする(近くの地下鉄があるところに逃げるとか)とか、いくつか想定して逃げる場所を決めておかなければなりません。そういう意味では、政府のCMは意味がありますね。ただし、政府もそもそも北朝鮮にミサイルを発射させない方策を真剣に考えないと、発射されるたびに『断固として受け入れることはできない』というような、のんきなコメントを出し続けるわけにはいきません」(大野氏)
万一の場合に備え、身を守る方法を検討しておく必要はあるということだ。だが、杞憂に終わってほしいものだ。
(文=編集部)