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片田珠美「精神科女医のたわごと」

小室圭さん父の自殺めぐり、母・佳代さん暴言との報道…佳代さんの“防衛メカニズム”か

文=片田珠美/精神科医
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眞子さまと小室圭さん(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 秋篠宮家の長女、眞子さまとの結婚が延期になっている、小室圭さんの母親の佳代さんが、夫の父親(圭さんにとっては祖父)に「小室は自殺している! それは全部あなたたちのせいだ!」「あなたたちの愛情が足りないから彼は自殺したんだ!!」などと罵声を浴びせたと、12月17日発売の「女性セブン」(小学館)で報じられた。

 2002年3月、圭さんの父親である敏勝さんが、前日の未明にパジャマ姿でスリッパを履いたまま自宅を出て行ってから24時間以上が過ぎており、自宅周辺をいくら捜しても見つからない状況での出来事らしい。その翌日、多摩川の近くで敏勝さんの遺体が見つかり、佳代さんの予想通り自殺だったという。

 あくまでも、「女性セブン」の報道を事実と仮定したうえで私が受けた印象だが、「愛情が足りない」と責められるべきなのは、むしろ自殺した敏勝さんの妻だった佳代さんのほうではないか。

 なぜかといえば、「女性セブン」によれば、敏勝さんは2001年の夏頃から体調を崩し、見るからにやつれた様子だったらしく、知人から「心の病だと思うから病院に連れて行ったほうがいい」と助言されたのに、佳代さんは「いやよ、病院に行かないのは本人の勝手だから」と答えたということだからだ。

 一連の報道が事実とすれば、「愛情が足りない」のは佳代さんのほうではないかと私は思う。しかも、サポート不足のうえ、敏勝さんを孤立させているようにも見えるが、いずれも自殺のリスクファクター(危険因子)に該当する。

 もちろん、1つの原因だけで自殺するわけではなく、複数の原因が積み重なった結果自殺に追い込まれる。だから、サポート不足も孤立もリスクファクターの1つにすぎないのだが、それが積み重なると悲劇につながることを忘れてはならない。

自身の“悪”を否認するための防衛メカニズム

 それでは、もし佳代さんが夫の父親を「あなたたちの愛情が足りないから彼は自殺したんだ!!」と罵倒したとすれば、一体なぜなのか?

 これは、「愛情が足りない」という自らの内なる“悪”を夫の父親に投影し、それを叩くことによって、自分にはそんな“悪”などないかのように振る舞おうとしたからだろう。いわば自身の“悪”を否認するための防衛メカニズムが無意識のうちに働いたわけである。

 そうすることによって、後ろめたさも罪悪感も覚えずにすむ。また、自分が「愛情が足りない」と責められる前に、相手を先制攻撃することによって、わが身を守ることもできる。

 このような防衛メカニズムは、“悪”が自分にはないかのように振る舞うために、さまざまな場面で働く。たとえば、嘘ばかりつく嘘言癖の人が他人の嘘に人一倍敏感で、誰かが嘘をつくと徹底的に攻撃するのは、よく知られている。

 あるいは、ひそかに不倫している人や不倫願望を抱いている人が、有名人や知人の不倫を激しく攻撃するのもよくあることだ。そうすれば、自分は不倫という“悪”と無縁であるかのように振る舞えるからである。

 さらに、仕事でミスばかりしている人が、他の誰かがちょっとでもミスをすると徹底的に責めることもあるだろう。これも、自分にはミスという“悪”などないかのように振る舞うためにほかならない。

 いずれの場合も、自分の“悪”を否認するための防衛メカニズムなのだが、本人が無意識のうちにやっており、自覚がないだけに、厄介だ。佳代さんも「愛情がない」という自らの“悪”を否認するために、夫の父親を知らず知らずのうちに罵倒したのだろうが、自分を守ろうとするばかりだと、他人を傷つけることもないわけではない。

(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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