東京都内の355病院で構成する一般社団法人東京都病院協会は21日、政府に緊急事態宣言の発令を求める極めて異例な「緊急メッセージ」を公式サイト上で発表した。緊急メッセージは新型コロナウイルス感染症に対応する医療現場の対応が限界であることを以下のように訴えている。全文引用する。
「現在、東京都では医療崩壊直前です
①現状のまま感染者が増え続け、東京都で1日1,000人を超えるような事態になれば、適切な医療を受けられず死亡する人が出てくることが高い確率で予想されます。
②医療従事者、特に看護師が疲弊しきってきています。
診療の現場での疲労に加え、感染を外部から持ち込むことによる病院内での集団感染を予防するため、10ヶ月以上の長期にわたり私生活を強く規制されています。私権の制限に相当する状況です。もちろんほとんどの看護師はGo To キャンペーンは利用できる立場ではありません。
①,②を回避するためには感染者数を短期間で激減させるしか方法はありません。
それには、緊急事態宣言やロックダウンに匹敵する極めて強力な対応を行うことが不可欠です」(原文ママ)
東京都によると、20日にまでの直近7日間で平均した1日当たりの感染者数が初めて600人を上回り、603人となった。20日日曜日は新型コロナウイルスの新たな感染者は556人だった。日曜日の新規感染者数としても過去最多を記録した。
東京都内の大学附属病院医師は次のように語る。
「土日祝日も関係なく病床がふさがっています。すでにマスコミで報じられているとおり、患者さんがたらいまわしになる事例が増えています。染症のスタッフでは足りず、外科、内科、耳鼻科などすべてのスタッフに現場への動員がかかっています。マンパワーはもうそろそろ限界だと思います。医師も看護師も人間です。不休で働けば、当然ミスが出ます。患者を振り分ける保健所や病院のトリアージにも支障が出ます。
東京都病院協会さんのように人の移動や経済活動を阻害するととられる発言をすれば、『経済的な困窮で亡くなる人が増える』という批判が殺到するでしょう。しかし、そもそも経済的に困窮する方の支援と、医療現場を維持する施策はトレードオフにしかならないのでしょうか。疑問です」
世界の感染封じ込めの動きと逆行し始めている日本
東京だけではなく、全国の医療環境は悪化の一途をたどっている。中国新聞デジタルは20日、記事『コロナで入院待ち、自宅療養の男性死亡 基礎疾患も 広島市』を配信。広島市の60代男性が14日、入院の待機中に自宅で亡くなっていたことを報じるなど、医療現場の限界を示唆するニュースも頻発し始めている。
感染力が既存のウイルス株より7割強いとみられる新型コロナウイルス変異株の感染者が英国を中心に発見され、英国ではロックダウン、欧州各国は英国からの入国制限の実施に舵を切りつつある。一方、厚生労働省は20日、海外から成田と羽田、中部、関西の4空港に到着した男女25人が新型コロナウイルスに感染していたことを発表。日本政府が実施中の入国制限の緩和措置の是非についても議論はまったなしの状態だ。
厚生労働省関係者は「年明け2月には中国の春節もある。国内新規感染者の抑制のため、国民の皆様に自粛を促しつつ、海外からの感染者流入に対しては今以上に国土交通省と連携して検疫を強化する」と話す。今年の年末年始はどうやらお屠蘇気分にはなれそうもない。
(文=編集部)