東京・築地市場の移転問題は、広く報じられているとおり、7月2日に行われた東京都議会議員選挙直前に、実質的な豊洲新市場への移転の方向性が示された。
そもそも、豊洲に移転すれば毎年大幅な赤字が出るし、築地にとどまったとしても、現段階で想定されている改修費用は豊洲移転後の赤字を大幅に下回るものの、市場を使いながらの改修は長期間かかる。
まさに、「移転するも地獄、とどまるも地獄」なのだが、これまで豊洲と築地の二者択一で綱引きのような状況が続いてきた。
本来であれば、築地と豊洲にこだわることなく、第三の道を含めて柔軟に検討する必要があると思われるが、表立ってそれは行われなくなったようである。何か特別な理由や事情がない限り、合理的に考えれば築地か豊洲かという選択肢に限定する必要はないはずだ。
その第三の道とは、すなわち築地市場の大田市場への統合である。
大田市場への移転を検討すべきという意見を持つ都議(当時)から、このような話を聞いた。同都議が大田市場への移転に関して、都の関係部局の職員と議論した際、「東京都の各卸売市場には利権がある。大田市場へ移転すれば築地を廃止して大田市場に統合することになるので、市場がひとつ減ってしまう。そうなれば利権も減るので、かなり激しい抵抗を受ける。だから移転はできない」との説明があったというのだ。なんと不可解な話だろうか。
小池百合子都知事は、利権を断ち切ろうとしたがうまくいかなかったのか。築地の利権は利権で、なんらかの形で残さざるを得なかったのか。それとも、単に新たな築地開発利権をつくりたかっただけなのか。
詳細はわからないが、いずれによせよ築地か豊洲かの綱引きの背景で、利権に振り回されたのは確かなようだ。
移転にせよ再整備にせよ、原資は都民の税金である。もっとも経済的で、東京都の中央卸売市場の経営改革や活性化に資する、そして何よりも関係事業者の持続可能な発展や、都民への安心で安全な食料供給に資する解決策を検討すべきではないか。その観点からすると、やはり築地市場の大田市場への統合を、第三の道として改めて真剣に考えるべきであると思う。