ふるさと納税をしたことで、自治体から贈られてくる返礼品が年々豪華になっている。もともと、ふるさと納税は自分が愛着を抱く地方自治体に“寄付”をする制度だが、これらの“寄付”が税控除されるため、ふるさと納税が開始された当初から節税効果があると一部の人たちには一種の財テクとして利用されてきた。
ふるさと納税の開始初年度となる2008年、全国の自治体にふるさと納税された総額は約81億円、件数は約5万3000しかなかった。これを奨励するため、総務省は制度を改正。面倒な手続きを簡略化したことで、額・件数ともに爆発的に増加した。
とはいえ、その最大の要因は制度が簡略化したことではない。得られる返礼品が豪華になり、お得感が実感できるようになったからだ。今やふるさと納税のガイドブックは多数出版されており、テレビでも特集が組まれるようになった。驚くような豪華な返礼品を贈る自治体も珍しくなく、たとえば漁業が盛んな町村ではカニやホタテといった高級な海産物を、畜産業が盛んな町村では新鮮な牛肉や乳製品を納税額に応じて返礼品にしている。
返礼品を目当てにした納税者たちが爆発的に増えたこともあって、15年度のふるさと納税総額は約1652億円に達した。20倍にまで増加しているのだ。
地方の農山村が多額のふるさと納税を得た一方で、本来は納税される自治体に税金が落ちない。東京23区は、ふるさと納税によって129億円もの税金が奪われていると試算している。東京都や東京23区・市町村には返礼品として贈れるような豪華な名産品が少ない。それは東京都のみならず大阪や名古屋などにもいえる。
大都市圏の市町村からは不満の声が相次ぎ、そうした事態を重くみた総務省は、今年4月1日に各地方自治体に向けて返礼品を納税額の3割までに抑えるように通知した。総務省は地方自治体を所管する中央省庁。いわば、国から「豪華な返礼品で納税者を釣るのは、やめなさい」という勧告がなされたわけだが、総務省の通知には法的強制力はまったくない。あくまで“お願い”でしかないため、総務省からの通知を無視して豪華な返礼品を続ける自治体も少なくない。