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東京、ふるさと納税で深刻な税収減…税金「奪い合い」の道具化、本来の目的逸脱

文=小川裕夫/フリーランスライター
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税の奪い合い

 もともと、ふるさと納税を考案し、政府に働きかけて実現させたのは福井県の西川一誠県知事だといわれている。過激化する返礼品問題を危惧しながらも、西川知事はふるさと納税を振興するべく「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」を5月16日に発足させた。同連合はその名の通り、ふるさと納税を振興・発展させようとする団体だ。しかし、そうした西川知事の思惑から大きく外れて、「ふるさとを振興させる」という趣旨から逸脱して暴走を始めている。ふるさと納税は、今や自治体間で税を奪い合う生存競争のアイテムへと変貌してしまった。現行のまま続ければ、自治体は疲弊するだけだ。

 埼玉県所沢市は、そうしたチキンレースから降りることを宣言。しかし、多くの自治体はやめることができない。同連合に加盟している自治体の首長は言う。

「人口や財源の少ない地方自治体にとって、ふるさと納税は必要な制度。総務省が『返礼品は3割まで』という基準を示したが、そもそも『納税額の3割』というのは、何をベースにした話なのか。スーパーや百貨店でカニやマグロを買えば、中間流通業者を経ているから値段は高くなる。必然的に高級品ということになるかもしれない。しかし、地元の漁師や農家から直接買えば、安く仕入れることができる。私たちは、ふるさと納税の返礼品を地元の業者から買っている。市価ベースで考えれば豪華な返礼品に映るかもしれないが、地方には海産物・農産物が豊富にある。これらを返礼品として贈っても赤字にはならないし、だから“豪華”とされる返礼品をやめる気もない」

 税収の少ない地方の過疎自治体にとって、ふるさと納税は死活問題。それだけに、総務省が「返礼品は納税額の3割まで」と通知してきても、そう簡単に「じゃあ、やめます」とは言えない事情がある。

 総務省の通知を無視もしくは静観する地方自治体が増えることは、総務省の沽券にもかかわる。そのため、総務省は5月24日に再び豪華な返礼品をやめるように通知を出したが、その効果は限定的と思われる。仮に、一時的に豪華な返礼品を取りやめたとしても、ほとぼりが冷めた頃に再び豪華な返礼品が復活することは想像にかたくない。

 総務省vs.豪華なふるさと納税の返礼品を贈る地方の過疎自治体の大戦争は、まだ始まったばかり。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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