人口約370万人を擁する最大の政令指定都市である横浜市。細かい話は省くが、規模の割に一体性に欠けるところがあるようで、筆者は以前、横浜市に対して政策提言を行った際、これを「穏やかなモザイク構造」と評した。
それがために、横浜市民の市政への関心も低いというか薄いのか、横浜市長選といえば、低投票率でいつの間にか終わっているというようなものであった。実際、前回2013年の選挙の投票率は、なんと29.05%。その前の09年の選挙の時は68.76%だったが、これは自民党から民主党に政権が交替した衆議院議員選挙と同日選挙だったことによるもので、それ以前は1978年以降、30%台という低投票率がずっと続いてきた。
そんな横浜市長選は7月30日に投開票が行われたが、横浜へのカジノ誘致の是非が重要な争点のひとつだった。投票率は37.21%で、前回よりは増えたものの相変わらず市民の関心は低かった。結果は、カジノ誘致について明言を避けていた現職の林文子氏が、反対していた元衆議院議員の長島一由氏と元横浜市議会議員の伊藤大貴氏を破り、3選を果たした。
カジノといえば、昨年の臨時国会で公明党幹部も反対するなか、強行採決で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、いわゆるIR(統合リゾート)推進法が成立、政府を挙げてその実現に向けた制度整備が進められている。地方公共団体も、地域経済の活性化につながることを期待して誘致合戦に余念がない。ちなみに、カジノの導入推進は共産党を除く超党派で行われてきた。民進党は推進法に反対したものの、超党派のカジノ議連には、名の知られた民進党議員も多く名を連ねている。
さて、カジノについては主な論点として、「依存症対策」「設置する地域(都市)」「カジノ関連規制・制度の在り方」の3つある。世間的には、ひとつ目と2つ目に関心が集まっている。筆者は3つ目が最重要で、ここを間違えばほかの2つも崩れると考えているが、制度論はあまり一般ウケがよろしくないようだ。
横浜と大阪に設置が規定路線?
どこにカジノを設置するかについては、横浜と大阪が最有力候補で、すでに決まっているという情報さえある。実際に関係者からは、議論はこの2都市に設置という結論ありきで話が進んでいるようだと聞いている。
横浜の具体的な設置場所は、横浜港の山下埠頭の再開発地域であると目されている。市の関係資料にも、漠然とした開発イメージしか示されておらず、カジノとは明記されていないものの、よく見ると明らかにシンガポール等のカジノ併設地区を念頭に置いていることが透けて見える。しかも、現段階で示されている案では商業・エンターテインメント部分が多くを占め、コンベンションは申し訳程度の広さだ。これではとても特定複合観光施設とはいえず、やはりカジノ第一の再開発にしか見えない。