陸上自衛隊のエリート部隊「第1空挺団」陸曹、飲酒伴う当て逃げ事件…防衛省が隠蔽か
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための緊急事態宣言が発令されてすぐの1月11日、千葉県習志野市の陸上自衛隊第1空挺団の駐屯地内に以下の文書が周知された。
<【注意喚起】
昨日夜半(0150)、団所属の営内陸曹により飲酒を伴う当て逃げ事件が発生した。
現在、国家として、緊急事態事態宣言が発令し、また、我々の同僚も医療崩壊を食い止めるため病院対し災害派遣を実施する等、コロナ封じ込めのため全力を尽くしているところである。
このような状況をよく認識し、高い責務を負う「空挺隊員」として、自覚ある行動に努めてもらいたい>
緊急事態宣言中、国民は午後8時までの外出自粛を求められており、公務員である自衛官は遵守する必要があるのはいうまでもない。しかも、この陸曹は「飲酒を伴う当て逃げ事件」を起こしており、非常に悪質だ。陸自関係者によると、この陸曹は当日外泊の許可を得ており、コロナウイルスの感染拡大防止の意識も低いといわざるを得ない。
当て逃げ事件について、防衛省は回答なし、警察は把握せず
この「注意喚起」の文面では、陸曹が飲酒運転をして当て逃げをしたことはわかるが、物損事故なのか、人にケガをさせた事故なのか、逮捕者が出た事件なのかが不明である。筆者がBusiness Journal編集部を通して千葉県警本部広報県民課に問い合わせたところ、「公表事案になっておらず、事件の存在も確認できません」との回答だった。逮捕、事故事案として千葉県警が把握していないということは、この陸曹が起こした事件や事故を警察に報告せずに隠蔽した可能性が高い。
また、当サイト編集部が防衛省陸上幕僚監部広報室へ送付した質問状の内容と回答は以下のとおり。
Q1:以下は事実でしょうか。
2021年1月10日午前1時50分頃に、陸上自衛隊第1空挺団所属の陸曹が飲酒運転の上、当て逃げ事件を起こした。この日、当直がいたにもかかわらず、事故を起こした陸曹は外泊を許されていた。
【回答】
部隊等の個別の状況について逐一回答することは差し控えます。
Q2:上記(1)で確認された事実を第1空挺団内に注意喚起するために、事件後に以下の「注意喚起」が掲示されたというのは、事実でしょうか。(筆者注:冒頭の注意喚起を参照)
【回答】
部隊等が平素から行う個別の服務指導の詳細について逐一回答することは差し控えます。各部隊等は、それぞれの特性を踏まえ平素から適切な指導を行っているものと認識しています。
Q3:事件が起きた1月10日は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言の発令中であり、宿舎外を20時以降に出歩き、飲酒運転をして事故を起こすということは、災害派遣に従事する自衛隊員としてはもとより、法律遵守を前提とする公務員としての自覚にも欠ける軽率な行為だとも受け止められますが、防衛省様としてのご見解をご教示いただけますでしょうか。
【回答】
部隊等の個別の状況について逐一回答することは差し控えます。服務事故等については、事実に基づき厳正に対応します。
Q4:当該事件で陸曹が警察に過失運転致死傷などの容疑で逮捕されたと考えられますが、飲酒運転での当て逃げ事故は悪質な犯罪であり、防衛省様として公表されておられない理由をご教示いただけますでしょうか。
【回答】
服務事故等については、事実に基づき厳正に対応します。公表については基準に基づき適正に行っております。
説明責任の放棄、まさに隠蔽そのもの
この回答を⾒て、読者の皆さんは納得できるだろうか。第1空挺団に周知された⽂書は、筆者が確認しているため、この【注意喚起】があったのは事実だ。ということは、陸曹が自粛期間中に飲酒して人か物に当て逃げをする事案が発生したと考えて間違いないだろう。仮に筆者の事実誤認なら、否定して詳細を説明すればよいだけのことだ。それを、事実かどうかすら答えず、こちらが証拠を提示した上での質問状にも回答を拒否するとは、税金で運営される省庁としては、あってはならないことである。国民を愚弄しているとしか思えない。
第1空挺団は陸⾃きってのエリート部隊でありながら、最近では⿃インフルエンザの殺処分にもかり出されており、団員には不本意という声が少なくないものの、存在感が⾼まっている。しかし、そのエリート部隊の中に飲酒の上で当て逃げするような人間を放置するのが、自衛隊の正しいあり方なのだろうか。空挺団の規律にもかかわることで、非常に事態は深刻だと考える。防衛省はすぐに情報開示し、メディアに広報対応すべきだろう。今の状態では誰がどう見ても隠蔽である。
(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)