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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

北朝鮮危機の裏で、米国が日韓など諸外国に武器輸出攻勢…潤う米軍需産業

文=浜田和幸/国際政治経済学者
北朝鮮危機の裏で、米国が日韓など諸外国に武器輸出攻勢…潤う米軍需産業の画像1北朝鮮が弾道ミサイル発射 ICBM発射実験に成功と発表(KCNA/UPI/アフロ)

 このところ、中国を人口の多さでも経済発展の速度でも追い抜く勢いを見せているのがインドである。人口は間もなく17億に達するというし、直近の経済成長率は7.1%を記録した。そんな未来の超大国インドに乗り込み、去る9月14日、安倍晋三首相は日本の新幹線方式を導入した高速鉄道の起工式に臨んだ。総事業費はなんと2兆円で、内80%以上を日本が先に負担する。「0.1%で50年返済」という超低利の円借款のなせる業といえよう。

 予想した通り、67歳の誕生日を迎えたモディ首相は大喜び。安倍首相と自らの巨大な全身写真を掲げ、安倍首相夫妻をもてなした。安倍首相も「モディ首相の経済政策は新幹線と同じだ。高速で、安全で、信頼できる。多くのインド人が喜んでいる」と応じていた。

 だが、本当に多くのインド人が喜んでいるのだろうか。確かにムンバイとアーメダバード間は現在8時間かかっているが、新幹線が開通すれば3時間でつながる。とはいえ、新幹線に乗れるのは裕福なビジネスパーソンに限られる。そもそもインドの鉄道は事故の多さで有名だ。2007年から今日だけでも700件を超える脱線事故が起き、多数の死傷者が出ている。

 多くのインド人にとっては「夢の新幹線」より、「事故のない鉄道」こそが必要とする社会インフラのはずだ。あまり知られていないが、インドは鉄道の総延長距離では世界第4位に位置する鉄道大国である。しかし、事故の多さでは世界1位との汚名に甘んじている。安倍首相の訪印直前にも重大事故が頻発し、鉄道大臣は更迭されたばかりだ。本来、鉄道の安全運航に欠かせない人材育成や路線整備にもっと資金を投入すべきであろう。

 しかも、現在使われている5万5000台の車両は老朽化している上、トイレなど衛生面の問題も深刻化する一方である。筆者もインドの鉄道には何度もお世話になったが、家畜と一緒になるような旅には閉口したものだ。「こうした問題を解決するのが先」との声が大きい。

 にもかかわらず新幹線にこだわるのは、モディ首相が選挙公約として掲げてきたからだが、今回の新幹線導入には国内で反発も巻き起こっている。

 安倍首相はどこまでそうしたインド人の声を理解しているのだろうか。計画中の新幹線はトンネルの距離が21キロで、その内7キロは海面下という。難工事に加えて、テロの頻発する地域を走行する新幹線は「金持ち列車」としてターゲットになりやすい。23年の開業を目指すというが、リスクの大きなプロジェクトであることを肝に銘じておく必要がある。

浜田和幸/国際政治経済学者

浜田和幸/国際政治経済学者

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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