創造的な外交を展開すべき時代
一方、相次ぐ北朝鮮のミサイル発射という挑発行為に対して、国際社会は右往左往するばかりだ。国連の安保理が決定した名ばかりの経済制裁と中国頼みの圧力では、一向に金正恩の暴走に歯止めをかけることはできそうにない。
これらはアメリカの対外的な指導力の低下をはじめ、中国やインドの台頭など、アジア、世界を取り巻く政治、経済、安全保障環境が目まぐるしく変化していることの結果に過ぎない。こうした情勢変化を冷静に把握しておかねば、政治的決断はもとより、ビジネス上の経営判断もうまく下せないだろう。
どの国と、あるいはどの企業と連携すべきか。国家や企業の命運を左右するのは目に見える部分に惑わされず、見えない部分の動きを正確に理解する力があるかどうかである。今こそ、北朝鮮問題の暴発を抑えるためにも、平壌と経済的結びつきの太い欧米諸国、特に英国、そしてロシア、中国、インドなどとも創造的な外交を展開すべき時代だ。
南シナ海では「フィリピン、べトナム対中国」といった対立の構図が急浮上している。もちろん、台湾やブルネイ、インドネシアも傍観しているわけではない。なにしろ、南シナ海は年間50億ドルもの貿易通商ルートである。世界の海上輸送の3分の1を占めるほどの重要な航路だ。
しかも、往来する船舶の大半は日本の貨物輸送にかかわっている。エネルギー資源の輸入や「メイド・イン・ジャパン」製品の輸出にとっての生命線である。このシーレーンを確保できなければ、日本は生きていけない。
日本政府はフィリピンに対して、「ビーチクラフトTC-90キングエア」の供与を申し出た。海上での警戒警備能力を高めるのが支援の目的だ。「リバランス政策」と称して、アジアとの関与を強めたオバマ前政権より、安全保障の分野でより深くコミットするかたちである。というのも、アメリカは中国に配慮してか、領土、領海問題に関しては、「一方に与しない」との姿勢を取っていたからだ。
これではフィリピンにしてもベトナムにしても、心もとないと思うのも当然であろう。トランプ政権の誕生により、アメリカの対中政策も変化する兆しは見えるが、北朝鮮問題の発生により、中国の対北朝鮮圧力を期待するトランプ大統領は言行不一致が目立つようになった。