2019年に約1100万円のテスラの電気自動車を公用車に導入しようとして批判を浴びた千葉県市川市の村越祐民市長が、新築された市川市役所の市長室内にガラス張りのシャワー室を設置したことが物議を醸している。
2月26日、越川雅史市議会議員の「市長室には秘密のシャワールームが設置されている」との質問に、村越市長は「市庁舎で長期間仕事をする際、私を含めてさまざまな職員が体を洗い、執務に適切な環境であたるため」と答弁した。
市民感覚とかけ離れている村越市長の主張
市川市役所の5階には、職員専用のシャワールームが3つ設置されている。それにも関わらず、360万円もの費用をかけて市長室にシャワールームを設置する必要など、果たしてあったのだろうか。
「市長専用ではないか」との質問に、村越市長は「越川議員の想像力の飛翔には驚くばかり」と前置きして「決してそのようなことはありません」と答えたが、市長室を通らなければ使用できない以上、「遠慮する職員が多いと感じる」(市役所関係者)のは当然だろう。
「首長の執務室にシャワーがなくとも危機管理上支障はない、と船橋市・浦安市などの6自治体は回答しています。船橋市と浦安市は職員用を一緒に使用すると回答しています」と、越川議員は近隣自治体の回答を村越市長に向けた。越川議員を含む一部会派の市議らは、特別調査委員会(=百条委員会)を設置する動議を提出している。
この一件は、会社でいえば社長の独自判断によるもので、首長の権力の大きさがうかがえるが、設置場所は社長室ではなく市長室であり、市川市の運営は市川市民の血税で成り立っている。
この件に関して、市川市民の声を聞いてみた。
「市長室にあっても不都合はないけど、ちょっと高すぎるかな」
「職員専用はともかく、市長室専用などいらないのでは」
「コロナで困っている市民の補助に充ててほしい」
「ガラス張り……大地震が起きたら余計な仕事が増えそう」
村越市長は「ガラス張りですが、ドアがあるため、女性が浴びても外に見られることは一切ありません」「必要な方にはシャワーを浴びていただきます」「(災害対応として市長室の空いているスペースにシャワーを設置するのは)多くの市民のみなさまにご理解いただけると思います」と答えているが、私が取材した限り、市川市民の賛成の声は極めて少数だった。
「カーテンを降ろせ」居眠り議員の声
ある市議会議員は「シャワールームを撤去すると新たに撤去費用がかかりますので、市長の給料から設置費用と撤去費用を出すよう、議案を提出します」と語る。
同様のケースでは、大阪府池田市の冨田裕樹市長が市役所に家庭用サウナを持ち込んで非難された問題が記憶に新しい。また、2015年には、秋田県由利本荘市の長谷部誠市長が市長室に湯船とシャワーを備えた市長専用のユニットバスを設置し、議会への説明を怠ったとして減給になったと報道された。
「いずれにしても、新庁舎の内覧会になかったものを、新庁舎設備費の余剰金を充てて設置するのはいかがなものでしょう」(前出の市議)
仮に私が市長なら、職員と同じ5階のシャワールームを使用する。そうすれば、多忙な災害時に疲れ切った職員を励ましたり、元気づけたりすることもできるだろう。そんな市長こそ、理想の上司ではないだろうか。
話は変わるが、旧庁舎時代に市川市議会を見学すると、数名の議員が居眠りをしていた。新庁舎には、7階の廊下から議会を傍聴できる窓がある。しかし、居眠り議員から「カーテンを降ろせ。撮影されてしまう」との声が上がったとか。筆者が傍聴した際は、左右とも閉じられていた。
「こんなことも、議会運営委員会で議論しなければならないのです」と前出の市議は嘆く。国政も地方政治も、日本の議員の質は下がるばかりだ。
(文=山中博文/政治ライター)