国内外を問わず、忍者ブームが続いている。観光地や自治体では、忍者ブームを町おこしに活用するケースも増えている。
火付け役は、訪日外国人観光客だ。外国人の約6割が「現在も忍者がいると信じている」というデータもあり、熱狂的な忍者ファンの多いアメリカからは、「今でも多数の忍者が存在している」「本格的なトレーニングを受けて忍者になりたい」などの声もあるという。
しかし、ブームの陰で問題も噴出している。ショーで殺陣やアトラクションを演じる忍者の絶対数が不足しているのだ。ブームによる需要の高まりを受けて各地で忍者不足が深刻化しており、数少ない忍者の“争奪戦”になっているという。
空前の忍者ブームの行く末はいかに。世界唯一の忍者の公式組織「日本忍者協議会」の立石邦博事務局長に、忍者ブームの実態や観光への活用法、忍者の歴史などについて聞いた。
外国人の6割が「現在も忍者がいる」と回答
――近年、訪日外国人の忍者への関心があらためて高まっています。この現状をどう見ていますか。
立石邦博氏(以下、立石) 2017年3月に日本忍者協議会が実施した「忍者グローバル調査」によると、外国人の約6割は「現在も忍者がいる」と信じています。
特に忍者への関心が高い国は、アメリカ、タイ、インドネシア、マレーシアです。なかでも、アメリカとタイは忍者観光のポテンシャルがもっとも高い。忍者体験を通じて、忍者に対する関心がより深まることが期待されます。アメリカの方は知識も豊富なので、忍者を観光資源として活用する際は“本物感”が大切になるでしょう。
興味深いのは、アメリカ人の約4割が「今でも多数の忍者が存在している」「本格的なトレーニングを受けて忍者になりたい」と言っていることです。忍者は地方創生にも活用することができ、有力な観光資源として注目を浴びています。
――観光資源としては、どのような活用法があるのでしょうか。また、経済効果についてはいかがでしょうか。
立石 全国の観光地や自治体では忍者に関連するイベントなどを行っていますが、忍者単体で人を呼び込むのは難しいです。たとえば、忍者以外に「桜」「神社仏閣」「城」「温泉」といった観光名所やグルメなど、さまざまな要素を複合させることが必要です。それに加えて「忍者に会える」という要素が、人を惹きつけることになります。
たとえば、神奈川県小田原市には小田原城があり、北条氏ゆかりの神社仏閣、かまぼこなどの海産物グルメ、周辺には伊豆や箱根などの温泉地もあります。そこに忍者も登場させることで、より有力な観光地になることができる。忍者は、そういうポテンシャルを秘めているということです。より多くの観光要素があればあるほど、人を多く呼び込めます。それは、どの地域も同じです。
そこで、忍者がどの程度の経済効果をもたらすか。まだ明確な数字を出すのは難しいですが、決して無視できない数字になると考えています。