海外でも伊賀と甲賀の認知度は高い
――観光地では、殺陣やアトラクションができる忍者を募集しています。忍者不足が伝えられていますが、どう考えていますか。
立石 もともと、殺陣やアトラクションができる忍者は一定数おり、減少しているわけではありません。忍者関連の施設も同様です。
ただ、訪日外国人の忍者に対する関心が高く、各観光地は人を呼び込むために忍者を必要とする。需要過多で供給が追いつかないため、忍者不足になってしまったのです。
忍者に対する関心がまだ薄い中国や韓国などで本格的な忍者ブームが起きれば、さらに需要は高まります。すでに観光資源としてのポテンシャルが高い忍者ですが、潜在的な需要もまだまだあると考えています。
――忍者になりたい人も少なくないそうですが、どうすれば忍者になれるのでしょうか。
立石 日本忍者協議会として特別な定義はしていません。忍者ショーで舞台に立っている方は、東京、大阪、京都のアクション系のプロダクションで学んだ方が多いです。
また、個人で「私は独自で修行したから忍者だ」という方に対して、「それは違います」と言うこともありません。なので、忍者の数について細かく把握はしていません。
――忍者といえば伊賀と甲賀が有名ですが、外国人は知っていますか。
立石 海外での伊賀と甲賀の認知度は大変高いです。忍者に関心の高い方は、「伊賀と甲賀は忍者発祥の地」と知っており、世界共通の認識になっています。
現代人も学ぶ点の多い、忍者の“仕事術”
――忍者のスキルや心構えのなかで、現代のビジネスパーソンにも参考になる点はあるのでしょうか。
立石 忍者の職制は諜報活動が中心です。敵から情報を収集し、その情報を味方に伝えることが使命でした。そのため、敵方の信用を得るために、あらゆる手段を取っていました。「夜中に屋敷へ忍び込み、情報を集めたのでは」と思われがちですが、古文書には意外なエピソードも残っています。
ある屋敷の前で仮病を使い、その屋敷の方に助けてもらうと、当日はそれで帰ります。後日、助けてもらったということでお礼の品を携えて行き、その相手を信用させ、取り入るなかで隠れていた情報を得るようにして、その情報を味方に伝えていたのです。
忍者にとって何より大切なのは、敵方の信用を得るということです。これは、現代のビジネスパーソンにも通じる話ではないでしょうか。もちろん、諜報活動なので相手をあざむくことには変わりありません。しかし、仮に暴力に訴えたとしても本当の情報が得られるとは限りません。
基本的には、波風を立てずに情報を得るというのが忍者です。これは、現代のビジネスパーソンも学ぶべき点かもしれません。