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八木澤氏は“殺人巡礼”を始めた動機を、次のように記している。
「なんで彼らが人を殺めたのか、その理由が知りたかった。そして、真っ当に社会を歩んできたわけでもない私は、なぜ人を殺めなかったのか。その眼に見えない境界線はどこにあるのか。そもそも境界線など存在せず、殺めなかったのは、単なる偶然にすぎなかったのか。その答えを導き出したかった」
本書を読み進めながら殺人者の心の襞に分け入っていく読者は、同じ疑問にとらわれるだろう。事件が起きると、マスメディアは犯人を徹底的に叩き、それを見る視聴者は「自分は彼らとは違う」と安心する。だが、「本当にそうなのか」と。
津山事件、金峰5人殺し事件、埼玉愛犬家殺人事件、金嬉老事件、本庄保険金殺人事件、和歌山毒物カレー事件、深川通り魔事件、西口彰連続殺人事件、地下鉄サリン事件など、よく知られている事件も多く取り上げられている。
犯罪者と私たちの境界線、土地と犯罪者の因果など、かつてあまり焦点が当てられることのなかった一面が、10年越しの止むべからざる思いに背中を押された著者の巡礼から浮かび上がってくる。
(文=深笛義也/ライター)
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