「(1)微生物に係る規格違反状況(表 8-<1>) 国別では、中国が 58 件(28.9%)、タイ 26 件(12.9%)、ベトナム 22 件(10.9%) と続いている。また、違反内容の多くは、冷凍食品の汚染の指標である微生物規格(細菌数、大腸菌群、E.coli<大腸菌>)の 139件(69.2%)であった」
「(7)残留動物用医薬品に係る規格違反状況(表 8-<7>) 国別では、ベトナムが 35 件(79.5%)、中国 4 件(9.1%)、インド 3 件(6.8%)と続いており、違反内容は、ベトナムではえびのエンロフロキサシンが最も多く」
これは8月に厚生労働省が発表した「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」において2016年度の輸入食品の食品衛生法違反状況を紹介した一部である。このなかで注目されるのが、ベトナムからの輸入食品の違反状況である。ベトナムは、輸入食品の微生物汚染違反の約1割、残留動物用医薬品汚染違反の約8割を占めていることが判明したのである。
ベトナムはTPP11の加盟国である。TPP11とは、米国がトランプ大統領の方針の下でTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱したあと、日本政府が主導して米国抜きでTPPを発足させるもの。11月に発足することが大筋合意されている。
このTPP11は、加盟国11カ国中6カ国の承認で発足するとしている。日本政府は2018年中に発足させたいとしているが、発足された場合、私たちの食の安全にどのような影響が生じるのであろうか。
現在、日本の食料自給率は38%、カロリーベースで62%は海外に依存していることになる。16年度の輸入食品の重量は3230万トンと、1990年の2173万トンと比較すると実に1.48倍に増加している。また、輸入業者が食料を輸入する際に検疫所に届け出る輸入届出件数は、16年度は過去最高の233万件であり、1990年の67万件の実に3.47倍にも急増しているのである。
さらにTPP11が発足すれば、ベトナムやマレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、ペルー、チリ、カナダ、メキシコからの輸入食品流入が急増することになる。
しかしながら、驚くべきことに現在の輸入食品の検査率はわずか8.4%であり、91.6%の輸入食品が無検査で輸入されているのである。前述したベトナムからの輸入食品の食品衛生法違反事例も、このわずか8.4%の検査率のなかで判明したものである。