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48時間通関制度
この検査率の低さは、検査を担当している検疫所に配属されている食品衛生監視員が419人(17年度)と微増の状況で検査件数を増やすことができない一方、輸入件数が急増しているからである。今後、TPP11で日本への食品輸入が急増すれば、この検査率はさらに下落し、9割以上の無検査輸入食品が流通することになる。
さすがにこのような事態に厚生労働省も危機感を持っているのか、11月に同省から発表された「食品衛生法改正懇談会取りまとめ」においても、「輸入食品の届出件数の増加を受けて、輸入時(水際)の検査を担う食品衛生監視員の人員確保については、輸入届出件数の増加に応じた増員とはなっていないため、引き続き、増員を図る必要がある」と指摘されたのである。
問題はそれだけではない。TPP11ではTPP協定で定められた48時間通関制度が日本で初めて適用されることになるのである。これにより、通関にかかる時間を基本的に48時間以内に収めることが義務付けられる。しかし現在、動植物検疫や食品検疫に該当する輸入貨物の通関時間は92.5時間(09年)となっている。今後、検査件数をさらに落とすことで同制度に適合しようとすれば、私たちの食の安全はさらに脅かされるのである。さらに、昼夜を問わない検査の実施などで検疫所の現場に過重な労働を招くことになりかねない。
TTP加盟11カ国の輸入食品違反件数を見ると、全違反件数の約1割がベトナムからの輸入食品であるが、11カ国で全違反件数の14.7%を占めることになる。TTP11でこれらの国からの輸入が急増することになり、48時間通関制度で迅速輸入が義務付けられるなかで、輸入に依存している私たちの食の安全は脅威に直面することになる。
(文=小倉正行/フリーライター)
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