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日本の農産物、海外でブームの兆候…「安心・安全・うまい」で輸出激増

文=山田稔/ジャーナリスト
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 もう少し詳しくデータを見てみよう。国別に輸出品の上位を比較してみると、面白い結果が出た。

1.香港…1位・真珠、2位・乾燥なまこ、3位・たばこ
2.米国…1位・ぶり、2位・アルコール飲料、3位・ホタテ貝
3.台湾…1位・たばこ、2位・りんご、3位・さんご
6.タイ…1位・豚の皮、2位・かつお・まぐろ類、3位・さば
14.ドイツ…1位・緑茶、2位・ラノリン(羊毛脂)、3位・ソース混合調味料

 まさに多種多彩。国・地域によって需要がまるで違っていることがわかる。

輸出増に向けた生産者たちの取り組み

 少子高齢化が急速に進み、国内市場が縮小する一方の日本で農林水産業に携わる生産者にとって、輸出拡大は生き残りのために欠かせない選択肢だ。政府が輸出サポート機関「日本食品海外プロモーションセンター」を創設し、海外市場の把握、プロモーションなどの支援を実施する一方で、各地の生産者たちも独自の取り組みで輸出拡大を図っている。そうした事業者のいくつかをピックアップしてみた。

 13年から北海道産を中心とした玄米の輸出に乗り出し、急速に輸出額を増やしているのが札幌にあるWakka Japanだ。香港、台湾、ハワイ、シンガポールに輸出した玄米を現地の自社工場で精米し、飲食店や個人向けに販売している。輸出実績は13年度の52トン・2929万円が、14年度は245トン・9315万円、15年度は465トン・1億4794万円と右肩上がり。直播栽培による低コスト米の生産、輸送コストの低減により、現地で競争力のある販売価格を実現した。現地のテレビ番組などで、米の研ぎ方からレシピなど日本産米や日本食文化の啓もう活動も実施してきた。17年には農業生産法人を立ち上げ、海外ニーズ(玄米、オーガニック等)に合わせた輸出用米の生産を開始した。同社は「平成29年度輸出に取り組む優良事業者表彰」で農林水産大臣賞を受賞した。

 北海道の十勝管内8農協で組織する十勝川西長いも運営協議会は、長いもの輸出を伸ばしている。1999年の豊作年に、国内市場価格を安定させるために4L規格(1.4kg以上)のものを薬膳ブームの台湾に輸出したのが発端だ。健康食品として台湾のほか、米国、シンガポールでも人気となり、14年産は対米輸出が量・金額ともにトップになった。同年産の輸出額は8億6888万円。HACCP認証を取得して「安全・安心」をPRしているほか、輸出専用段ボールに専用の中敷きを使用することで鮮度・品質を確保するなどの努力が実った。同協議会は16年度の事業者表彰で農林水産大臣賞を受賞した。

 このほかにも、中東市場(UAE)への海苔輸出を軌道に乗せた熊本県の海苔生産企業や、東南アジア、EU、米国など30カ国に錦鯉を輸出している新潟県の錦鯉養殖業者など、全国各地で生産者、事業者が日夜奮闘している。

 インバウンド(訪日外国人旅行客)の急増ばかりが話題になるが、日本産の農林水産物の輸出も確実に伸びている。メード・イン・ジャパンは自動車や家電など工業製品が世界を席巻したが、これからは「安心・安全でうまい」日本の農林水産物が注目を浴びることになりそうだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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