「大東京」への人口流入が止まらない。
総務省が1月29日に公表した人口移動報告によると、2017年の都道府県間の移動者数は228万7310人で2年ぶりの増加となった。都道府県別の転入超過数がもっとも多いのは、東京都で7万5498人。以下、千葉県1万6203人、埼玉県1万4923人、神奈川県1万3155人、福岡県6388人、愛知県4839人、大阪府2961人と続き、転入超過は全部で7都府県。残り40道府県は転出超過となった(最多は福島県の8395人)。
もう少し大きな地域レベルで見ると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は11万9779人の転入超過で22年連続である。名古屋圏(愛知、岐阜、三重)は4979人の転出超過、大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)も8825人の転出超過。ともに5年連続の転出超過となっており、東京圏の突出ぶりが歴然だ。東京圏への転入超過は15歳から29歳の若者が多く、進学や就職に伴う移動とみられている。
一極集中が進む東京都の人口は1375万4059人(18年1月1日現在の推計)で、前年同月比で10万7295人の増加となっている。日本の総人口は1億2659万人(18年1月1日現在の概算値)なので、日本全体の10.9%の人々が東京都にひしめき合っていることになる。
都内で人口の多い区は、世田谷92万人、練馬73万人、大田73万人、江戸川69万人、足立68万人(四捨五入)。市では、八王子58万人、町田43万人、府中26万人、調布24万人、西東京20万人(同)となっている。前年と比べ人口増加が多いのは、世田谷7572人、中央7183人、江東6686人、大田6046人、杉並5539人の順。
東京都の人口増加は22年連続で、社会増減(他県との移動増減)が大きな要因。自然増減でみると4782人の減少となっている。他県からの転入がなければ東京の人口は減少していく可能性があるということだ。
国連発表の「世界都市ランキング」でも東京は断トツ
東京圏の一極集中ぶりは世界的に見ても群を抜いている。
国連の「The World’s cities data booklet」(16年)は、世界の人口の半分以上は都市部に集中していると指摘している。隣接する市街地まで境界線を広げた「都市的集積地域」という概念で巨大都市のランキングを発表した。トップ10は以下の通り(数値は四捨五入)。
1.日本・東京…3814万人
2.インド・デリー…2645万人
3.中国・上海…2448万人
4.インド・ムンバイ…2136万人
5.ブラジル・サンパウロ…2130万人
6.中国・北京…2124万人
7.メキシコ・メキシコシティ…2116万人
8.日本・大阪…2034万人
9.エジプト・カイロ…1913万人
10.アメリカ・ニューヨーク…1860万人
東京の3814万人というのは、冒頭の総務省データ(人口移動報告)における「東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)」の人口とほぼ同じだ。つまり、「グレーター東京」といったイメージなのだと推測できる。そのスケールは、世界の都市圏を圧倒して断トツなのである。
全国の市町村の4分の3が転出超過
東京の人口が膨れ上がる一方で、地方の衰退が止まらない。転出超過は40道府県に上り、全国にある1719市町村のうち転出超過は1311と全体の76.3%。転出超過が多い自治体は、北九州市2248人、堺市2211人、長崎市1888人、那覇市1537人、神戸市1507人となっている。道府県別では、福島県8395人、兵庫県6657人、北海道6569人、新潟県6566人、青森県6075人の順。福島県は15年以降3年連続で転出超過数が前年よりも増加している。
政府は「地方創生」を強調し続けているが、状況は一向に改善されていない。
政府は東京23区にある大学の定員増を原則10年間禁止する法案を通常国会に提出する構えだ。地方からの若者流出を食い止めるためだが、そんな小手先の対策では話にならない。首都機能の移転、分散といった抜本的な対策に手を付けないことには潮流は変わらないだろう。
東京一極集中の打開策としての首都機能移転構想は半世紀以上も前からあり、1992年には「国会等の移転に関する法律」が成立したが、現時点では文化庁や消費者庁に移転の動きがある程度。高度情報化社会の時代に、東京にすべての機能が集中する必要はない。観光政策にしても、単に外国人客を呼び込むだけでは弱い。インバウンド増を地方活性化につなげる有効な政策プランを実行できるのか。
「地方創生」というお題目を唱えるだけでなく、実効性のある抜本的な政策が急務となっている。
今年は明治維新から150年。ドラスティックな改革が必要になっていることは間違いない。
(文=山田稔/ジャーナリスト)