輸入食品の安全性、信頼性への疑問は尽きない
今後、人口減少が続く日本の食料の需要そのものは徐々に減っていくだろうが、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の展開次第では農林水産物の輸入が大幅に増加するといわれている。しかし、コトはそう単純ではない。特定国への依存が高いなかで中長期的に必要な量を安定的に輸入し、供給を確保できるかどうかにかかっている。さらには、増大する輸入農産物、水産物の安全性がどこまで保証されるかといった問題もある。
国連の推定では、世界の人口は年に1.18%の割合で増え続けていて、2050年には90億人に達する。穀物や水など世界的な資源・食料争奪戦が指摘され、価格が高騰するなか、今のような特定国依存はリスクが高すぎる。国内での生産性を上げ、生産力を増やすことを優先する政策が必要なのは言うまでもない。
一方で、輸入食品の安全性への懸念も強まっている。残留農薬、遺伝子組み換え食品など、消費者の不安は尽きない。
厚生労働省の「平成29年度 輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」中間報告によると、17年4月から9月までの輸入届出件数は122万5011件。これに対して10万2756件の検査を実施し、384件の法違反が確認され、積戻しや廃棄等の措置を講じたという。法違反で多かったのは、「食品の規格(微生物、残留農薬、添加物の使用基準等)」が245件、次いで「アフラトキシン等有害・有毒物質の付着等」が106件、「食肉の衛生証明書の不添付」が8件などとなっている。
届け出件数に対する違反件数の割合は0.03%と低いが、問題は検査件数の少なさだ。届け出件数に対し、わずか8.4%しか実施されていないのである。このほかに2万9709件のモニタリング検査を実施しているが、膨大な輸入品の全量検査からはほど遠いのが実態だ。検査の網を潜り抜けてしまうケースが多いのではないかと心配される。
食品関連業者や消費者サイドにも改善すべきテーマがある。膨大な食品ロスだ。国連の「世界の食料安全保障と栄養の現状2017」によると、武力紛争の拡大や気候変動(異常気象)により、世界の飢餓人口は8億1500万人(全人口の11%相当)に達している。農水省の推計(14年)では日本の食品ロスは事業系339万トン、家庭系282万トンの合計621万トン。国連WFPによる世界全体の食料援助量320万トン(15年)を上回っている。
膨大な食材、食品を輸入しながら、大量の食べ残しを出している“飽食ニッポン”。最近も、恵方巻の大量廃棄が問題になったが、氷山の一角にすぎない。食べ放題、大食い番組などがもてはやされ、日本はあまりにも危機意識が希薄すぎる。食品ロス対策は、長野県松本市の「残さず食べよう!30・10運動」がある。宴会などで、「乾杯後30分間は席を立たず料理を楽しむことにする」のが30、「お開き前10分間は自分の席に戻って、再度、料理を楽しみ食べ残さないようにする」のが10の意味である。大手コンビニで発注システムを改善する動きもあるが、依然、抜本的な解決には至っていない。
増え続ける食料輸入にどう向かい合っていくか。国民の知恵が試されている。
(文=山田稔/ジャーナリスト)