独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)は2003年10月、日本貿易振興機構法に基づき、前身の日本貿易振興会を引き継ぐかたちで設立された。「70カ所を超える海外事務所ならびに本部(東京)、大阪本部、アジア経済研究所及び国内事務所を合わせ約40の国内拠点から成る国内外ネットワークをフルに活用し、対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援に機動的かつ効率的に取り組むとともに、調査や研究を通じ我が国企業活動や通商政策に貢献」(ジェトロのHPより)しているとされ、職員は1803名にも上る。
今、このジェトロの内外に激震が走っているのである。2月1日の参議院予算委員会で、ジェトロが内部文書で無期雇用転換逃れのための雇い止めを指示していた問題が取り上げられたのである。
4月1日以降、労働契約法改正により、非正規雇用の労働者などに無期転換を申し出る権利が与えられることになっているのに対して、ジェトロ本部が各組織の所属長に以下内容が記された内部文書を送付していた。
「財源、予算規模共に将来の人件費の安定的執行に制約があるため、無期転換の対象となる職員数は相当限定せざるを得ません」
「無期転換の申込権を行使した職員の雇用に当たっては(略)その財源や予算の確保には不透明性や制約があることから、2018年度の契約は相当狭き門となるということです」
つまり、無期転換権を与えないために、雇い止めを指示することをしていたのである。この対象となった嘱託職員は、140名にも上っている。
この内部文書を明らかにした田村智子参議院議員(共産)は、「無期転換権を与えないために雇い止めにする可能性が非常に高いということを丁寧に説明している文書ですが、経産大臣、どうしますか」とジェトロの所管大臣である世耕弘成経済産業大臣に答弁を求めた。これに対して世耕経産大臣は、以下のとおり内部文書の撤回を指示したことを明らかにした。
「ジェトロの文書において無期転換の対象となる職員数は、相当限定せざるを得ませんと記載しているのは、これは適切ではない」
「昨日、私のほうから事務方に対して、ジェトロにおいてこの文書を撤回した上で、改めて職員に対して早急に労働契約法の趣旨を周知徹底し直すように指示をした」
これだけでもジェトロの大失態なのであるが、問題はそれだけではない。ジェトロの出版事業にも異変が起こっているのである。