組織的な署名偽造は誰が指示をし、関与者はどこまで広がるのか――。中日新聞は20日、記事『【独自】高須氏秘書、指印不正か リコール署名、事務局長から要請と説明』で以下のようにスクープし、反響が広がっている。記事冒頭を引用する。
「愛知県の大村秀章知事のリコール活動団体会長で美容外科『高須クリニック』の高須克弥院長の女性秘書が、署名提出期限直前の昨年10月下旬~11月上旬、名古屋市内の公共施設で、押印のない大量の署名に指印を押す不正に関与した疑いがあることが、複数の関係者への取材で分かった」
同記事では、高須院長による「私は全く知らなかった。本人に確認したところ『田中さんから指示されて悪いことをしてしまった』と話していた。厳しく注意した」とのコメントも記載された。
高須院長が言及する“リコールに賛同する中日新聞の無二の親友“
ところがこの記事が出る直前の19日、渦中の高須院長は自身の公式Twitterアカウントで、記事を取材した中日新聞と一連のリコール運動の関係をにおわすような投稿をしていた。
中日新聞社に勤めている友人の記者が「高須先生のところに勤務している人が不正署名の押指印に協力したとの情報を入手したので記事にします。すいません」
— 高須克弥 (@katsuyatakasu) May 19, 2021
何が「すいません」だよ???なう。
「中日新聞社に勤めている友人の記者が『高須先生のところに勤務している人が不正署名の押指印に協力したとの情報を入手したので記事にします。すいません』 何が『すいません』だよ なう」(原文ママ、以下同)
「この記事を書く中日新聞社の記者君は、僕の無二の親友の中日新聞記者の部下だったので友人の仲間扱いしていたしていました。この親友の仲介で河村市長の希望するリコールに賛同していました。
『上司がどうしても記事にしろと言うので僕にはどうしようもありません』だって。新聞社の組織は複雑。」
高須院長と中日新聞の間に特別な関係はあるのか
高須院長の一連の投稿が事実だとすれば、取材をした中日新聞記者は高須院長の利害関係者だったかのようにも見える。つまりリコール運動の賛同者だった人物が、一転して追及記事の取材をしているということなのだろうか。警視庁関係者は「あくまでも事件報道の一般論」とした上で次のように話す。
「愛知県警の捜査が進んでいる状況でしょう? 中日の情報源には県警関係者が含まれていると思います。警察の捜査対象団体の最高責任者と個人的な友人関係にあったり、利害関係者だったりする記者に、ウラ取りやコメント取材を担当させたら、捜査に支障が出る情報漏洩が起こる危惧があります。個人的な主義主張や付き合いを否定するわけではありませんが、こういうケースの場合、どこのメディアさんも取材相手と懇意な記者ではなく、“特別な背景のない記者”を担当させるものですが……。高須氏と地元メディアの濃密な関係性が垣間見える異様な投稿に少し驚きました」
当編集部が一連の高須院長の投稿に関して、中日新聞社編集局に事実関係の確認と見解を求めたところ、寺本政司編集局次長名で以下のようなコメント回答があった。
「高須氏のTwitterについて、当社としてコメントすることはございません」
愛知県知事リコール署名偽造事件で愛知県警は19日、地方自治法違反(署名偽造)の疑いで、元愛知県議(今年2月まで日本維新の会衆議院愛知5区支部長)でリコール活動団体事務局長の田中孝博容疑者(59)ら男女4人を逮捕している。
一連の騒動は一昨年8月に愛知県などが開催した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展」で、昭和天皇に関する映像作品や慰安婦をモチーフにした少女像などが展示されていたことが発端となった。同展示を問題視した高須院長が会長を務める団体が、去年8月から大村知事のリコールに向けた署名活動を展開していた。
(文=編集部)